ロードの無いロード・ムービー
愛の無いラブ・ストーリー
犯罪の無い犯罪映画
【ABOUT A FILM】
『リバー・オブ・グラス』(1994)は、ケリー・ライカートの悲観的で、おかしな長編デビュー作だ。脚本兼監督のライカートは自身が刑事の父親と麻薬取締官の母親とともに育った、思春期の舞台である南フロリダの郊外の風景に戻ってきた。16mmで撮られたこの物語は、リサ・ボウマン演じる不満のつもった主婦コージー、そして本作プロデューサー兼編集でも務める期待の新人、ラリー・フェセンデン演じる目標もない怠け者のリーに降りかかる災難を描く。ライカートが「道のないロードムービー、愛のない恋愛映画、犯罪のない犯罪映画」と描写するこの『リバー・オブ・グラス』で観客が見つけるのは、すでに自らの技術を自在に扱い、特徴的なスタイルを確立している一人の監督だ。
【STORY】
30才のコージーは何もない場所に住んでいる。フロリダのブロワード郡の、1エーカーの湿地に建つ、平屋建ての家。マイアミとエバーグレーズに挟まれたどこにでもあるような土地で、15マイル置きにショッピングモールが建っている。コージーはかなりの空想家だ。人のいい夫婦が大きなステーションワゴンでやって来て自分の子供たちを引き取っていくこと、そうして彼女自身が新しい人生を始められるということを、延々と夢見ている。
コージーの父はデイド郡(1997年にマイアミ・デイド郡に改名)のマイアミ警察署の刑事だ。50代半ばのライダーは注意散漫なタイプで、夜勤で働いては、昼間はジャズクラブでジンを飲んで過ごしている。最近、彼は飲みすぎて銃を(また)どこかに置き忘れたようで、見つかるまで停職を食らっている。だがライダーにとっては困ったことに、リー・レイ・ハロルドという謎の、夢もない負け犬が彼の銃を見つけてしまっていた。
【Gucchi’s Free School presents:秋の文化芸術週間 2020 ケリー・ライカート監督特集】
京都編:出町座(『リバー・オブ・グラス』『ミークス・カットオフ』)×京都みなみ会館(『オールド・ジョイ』)
全体の詳細は画像クリック!
1994年/USA/73分
監督・脚本:ケリー・ライカート
製作:ジェシー・ハートマン、ケリー・ライカート
撮影:ジム・ドゥノー
編集:ラリー・フェセンデン
音楽:ジョン・ヒル
出演:リサ・ドナルドソン(リサ・ボウマン名義)、ラリー・フェセンデン、ディック・ラッセル、スタン・カプラン、マイケル・ブシェミ