ただただあなた(映画)が好きなだけ…ただそれだけ!
「すみません。映画監督の渡辺紘文という者なんですが
自分の映画を上映してもらえる劇場を探しています。」
インディペンデント映画界の片隅で”世界の渡辺“が繰り広げる自分探しロードムービー!過去の栄光とプライドにまみれて燻り続ける主人公と、映画界を取り巻く有象無象の登場人物たち。
日本のインディペンデント映画界のつらく、切なく、アホらしくて愛おしい現実が、虚構と交差していく。
映画好きにはたまらない、全国ミニシアター行脚!
コロナ禍で苦境に立たされるミニシアターのリアルな実態、そして未来をドキュメンタリータッチで描き出す。
映画を観るだけでなく、映画を通して交流が生まれる場所であるミニシアターの魅力とは!?
90歳の名物館長・岡村照さんが切り盛りする別府ブルーバード劇場、高倉健に愛された小倉昭和館、昭和にタイムスリップしたようなレトロな映画館・首里劇場、北海道最古の映画館・大黒座。長年、街に愛され、街に根付いてきたミニシアターのほかに、ZIG THEATERや豊岡劇場など、若い館長が立ち上げたミニシアターまで、沖縄、大分、福岡、鳥取、兵庫、北海道の実在するミニシアターがロケ地として登場する。
しかし本作の完成後、2022年4月に首里劇場の金城政則館長が急逝し閉館が決まり、5月にサツゲキが経営は継続するも民事再生法を申請、8月末をもって豊岡劇場が一時休館されることになった。そして8月10日、丹過市場の火災により昭和館が全焼した。10日後に創業83年を迎える予定だった。コロナ禍で様々なミニシアター救済企画が立ち上げられ、メディアでもミニシアターの苦境は取り上げられてきたが、ミニシアターを取り巻く状況は依然厳しいままである。
映画監督自身が映画館に自分の映画を売り込みにいくことは、日本のインディペンデント映画界では珍しいことではない。コロナ禍でも映画の灯を絶やさず、映画館を存続させるようと切実な状況にあるミニシアターに以上に、監督自ら映画を売り込みにいく“世界の渡辺”も切実だ。なかなか上映が決まらない中、唯一上映できた豊岡劇場では、誰も“世界の渡辺”を知らず、手売りの前売り券も全く売れず、惨憺たる結果を目の当たりにする……。しかし映画を観にくる観客がいて、映画を届けたいと思う映画館がある限り、ミニシアターは今日も続いていく。本作からは映画を愛する人がいる限り、“世界の渡辺”のように映画を愛する映画人がいる限り、暗い未来だけではないことが伝わってくるはずだ。
2022年/日本/103分 Your Lovely Smile
配給:Cinema Drifters
出演:渡辺紘文、平山ひかる、尚玄、田中泰延、矢田部吉彦
監督・脚本・プロデューサー:リム・カーワイ
撮影:古屋幸一
録音:中川究矢、松野泉
編集:リム・カーワイ
音楽:渡辺雄司
サウンドデザイン:松野泉
宣伝デザイン:阿部宏史
予告編監督:秦岳志