イタリアが生んだ偉大な映画監督、フェデリコ・フェリーニ(1920-1993)が誕生してちょうど100年目にあたる2020年。1950年の『寄席の脚光』以降、40年にわたって『道』『カビリアの夜』『甘い生活』といった名作を手掛けたフェリーニ。映画のみならず、音楽、絵画、舞台、写真といったあらゆるアートに多大な影響を及ぼした巨匠の代表作6本を集めた「生誕100年フェデリコ・フェリーニ映画祭」。
青春群像 I Vitelloni
1953年|モノクロ|107分|出演:フランコ・インテルレンギ、アルベルト・ソルディ、フランコ・ファブリーツィ
故郷リミニを思わせる地方都市を舞台に、定職を持たずいい加減な生活を送る5 人の青年たちの彷徨と旅立ちの物語。自伝的要素の濃い作品として知られ、ヴェネツィア国際映画祭でサン・マルコ銀獅子賞を受賞、米国アカデミー賞でも脚本賞にノミネートされるなど、フェリーニが世界的に認められるきっかけとなりながらも、日本では『道』がヒットした後の1959 年にようやく公開された。
道 La Strada
1954年|モノクロ|107分|出演:アンソニー・クイン、ジュリエッタ・マシーナ、リチャード・ベースハート
死んだ姉の代わりに、旅芸人ザンパノのパートナーとしてわずかな金額で買い取られたジェルソミーナ。度重なる暴力やサーカス団の男との出会いや別れを経験しつつもザンパノと行動を共にするジェルソミーナだったが、ザンパノは彼女をあっけなく捨ててしまう。ニーノ・ロータ作曲の哀切なメロディとともに、粗野な男と純粋な魂を持った女の心の旅が描かれるフェリーニの代表作。
甘い生活 La Dolce Vita
1960年|モノクロ|174分|出演:マルチェロ・マストロヤンニ、アニタ・エクバーグ、アヌーク・エーメ
ゴシップ紙の記者マルチェッロの目を通し、1950年代後半のローマを我が物顔で闊歩する上流階級、カトリック教会、知識人、芸能人たちの退廃的な生活を絢爛に描く。ヘリコプターに吊り下げられたキリスト像が上空を行く冒頭のカットから鮮烈なイメージ満載の、フェリーニ美学の頂点とも言える作品。本作でマストロヤンニが一躍スターとなった。カンヌ国際映画祭でパルムドール受賞。
8 ½ 8 1/2
1963年|モノクロ|138分|出演:マルチェロ・マストロヤンニ、アヌーク・エーメ、クラウディア・カルディナーレ
映画監督のグイドは、新作の構想を練るため温泉地へとやってくるが、一向に作業がはかどらない。次第に彼は過去と現在、現実と幻想の垣根を飛び越えていき…。盟友マストロヤンニがフェリーニ自身を思わせるグイドに扮して繰り広げられるめくるめく映像世界。あまりの奔放さ故、公開当時の観客、批評家は戸惑ったが、後の映像作家たちに多大な影響を与えるなど、その魅力は普遍的な輝きを放つ。
魂のジュリエッタ Giuliea degli spiriti
1965年|カラー|144分|出演:ジュリエッタ・マシーナ、サンドラ・ミーロ、マリオ・ピス
15回目の結婚記念日を迎えたものの、夫の浮気に悩まされ、満たされない日々を送る平凡な主婦ジュリエッタ。ある占い師との出会いをきっかけに彼女の意識は日常生活から解放され、夢と現実を行き来するようになる。『8 1/2』の女性版とも言えるファンタジックな物語。フェリーニにとって長編としては初のカラー作品で、その効果を最大限活かした万華鏡のような色彩美が観る者を圧倒する。
フェリーニのアマルコルド Amarcord
1973年|カラー|124 分|出演:ブルーノ・ザニン、マガリ・ノエル、プペッラ・マッジョ
フェリーニが幼少期を過ごした1930年代のリミニでのエピソードをふんだんに盛り込み、家族やユニークな人々とふれ合いながら大人の世界を覗き込む少年たちの姿が季節の移り変わりと共に大らかに描かれる。原題は「私は思い出す(A m’arcord)」を意味するロマーニャ地方の方言からつくられた造語。70 年代のフェリーニ作品の中で特に人気が高く、4度目のアカデミー賞外国語映画賞をもたらした。