記憶と光が反射する――
最新作『Underground アンダーグラウンド』の公開を記念して
上映機会の少ないデビュー作『ノイズが言うには』から短編『カラオケ喫茶ボサ』まで
小田香の15年にわたるフィルモグラフィーを振り返る
新作長編『Underground アンダーグラウンド』の公開と共に、特集上映をしていただけることになりました。自分自身と家族を撮った映画、サラエボやメキシコで撮った映画、短かったり多少長かったり、ドキュメンタリーと呼ばれたり呼ばれなかったり、なんだか一貫性のないようなフィルモグラフィーに見えますが、身近な葛藤を映画に撮ることを経て、未知の場所をカメラで探求する方向にいったことは、じぶんにとっては自然な流れだったという気がします。
一連の過程のなかで、じぶんが常に考えていたのは、カメラの後ろ(じぶん)とカメラの前(人間、土地、出来事)の関係性を誠実にうつすには、どこにカメラを置いて、どのように撮ればいいのだろうということでした。多くの過ちや不出来のなかで、たまに、なにかうつったかもしれないという瞬間があり、その欠片を集めて編集で接続させてきました。
じぶんの映画制作の動機のひとつに、他者を理解したい、他者から理解されたい、という感情があります。最近は、他者を完全に理解することはないし、家族であれ見ず知らずの人であれ理解できると思うこと自体が不遜だと思うようになりました。それでも、感情は感情として胸にあり、そんな距離感が特集で上映していただく作品のイメージに反映していたらいいなと思っています。
2025年1月 小田香
【上映作品】
A『ノイズが言うには』38分/2010年
A『あの優しさへ』63分/2017年
B『鉱 ARAGANE』68分/2015年
C『セノーテ』75分/2019
D『GAMA』53分/2023
E短編集(95分)
『ひらいてつぼんで』13分/2012年
『呼応』19分/2014年
『FLASH』25分/2015年
『色彩論 序章』 6分/2017年
『風の教会』 12分/2018年
『Night Cruise』 7分/2019年
『カラオケ喫茶ボサ』13分/2022年
*全作品、日本語または日本語字幕付き
*小田香作品のソフト化、配信の予定はございません。
作品提供:FieldRain、trixta 配給:スリーピン