イマジナリーラ イン
© 2024 東京藝術大学大学院映像研究科

イマジナリーラ イン

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2026

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境界線(イマジナリーライン)を超えて
わたしはあなたになる
 

2023年6月、入管法改正案が採択され入管制度の厳罰化がさらにすすんだ。こうした状況をふまえ、本作は 東京藝術大学大学院の修了制作として企画された。坂本憲翔監督を始めとする学生スタッフと俳優たちは、仮放免者や入管の被収容者、支援者への取材を行い、入管内部の実態にまで深く切りこんだ。

タイトルの『イマジナリーライン』とは、映像制作の専門用語で、向かい合う人物の間をむすぶ“仮想的な線”のこと。キャメラがその線を越えないことで、被写体の視線や相対的な位置関係に一貫性をもたらすことができるが、本作ではそれを人と人との間に生じる「見えない線引き」とも捉えることができる。
 


■「日本」だとか。「日本人」だとか。「外国人」だとか。「国」だとか。今日まで一体、誰の話をしていた?この映画では、名前を呼んで、問いかける。何度も繰り返し、名前を呼んで、問いかける。そんな当たり前の事を、もう忘れたくないと思った。今も閉ざされたままの、その人がいる。響きの異なる名前を持った、私たちがいる。
____折坂悠太(シンガーソングライター)

■ 本編の終わり近く、文子の書く脚本の一場面として、入管の面会場面が描かれる。文子演じる面会者は二人を隔てるアクリル板を壊し、二人はそこから逃げ出す。制止する入管職員はおらず、現実離れしたシーンだ。しかしそう思った瞬間、気づかされた。アクリル板を壊してはならないものと思い込まされているように社会の法やシステムは不変不可侵のもののように多くの人が誤解している。不条理に苦しむ隣人の涙に気づく人が増えれば、それを壊して作り直せるのだと本作は静かに、力強く伝える。フィクションの力、想像をとめないこと。表現者としての監督の、スケールの大きさを感じさせる力作。
____寺尾紗穂(シンガーソングライター)

■「ルールを守らない外国人が、国⺠の安全と安心を脅かしている」―。そんな言葉が国家機関からも政治家からも平然と語られる。だが、実際にルールを踏みにじっているのはいったい誰なのか。司法審査も期限もないまま自由を奪い続ける日本の入管収容制度。国連の自由権規約委員会や拷問禁止委員会は国際基準から逸脱していると繰り返し懸念を示し、日本政府に改善を求めてきた。なぜ国際法は、恣意的な無期限拘束の廃止を強く求めるのか。その答えはこの映画の中にはっきりと映し出されている。入管当局の裁量行政に翻弄される外国人と、友を見失うまいと必死に寄り添う日本人。本作は、人と人のあいだに引かれた残酷な「見えない線」をそっと可視化し、観る者に静かでありながら確かな問いを投げかけてくる。
____平野雄吾(共同通信記者『ルポ入管』著者)

■ 近年、その非人道性が社会問題となった日本における入管制度、難⺠問題を取り上げ、短い準備期間の中で取材、調査を行って「現実」に挑んだ。何より俳優との信頼関係を構築し、その身体に空間を開け渡すことで、迫真の演技とリアリティを実現し、わたしたちをこの耐え難い状況に巻き込んでゆく力を画面に漲らせる。しかし、それは現実の再現にとどまらず、撮影するという行為そのものを映画に導入することで抽象的な表現に高められる。ある場面における驚くべきその非現実的な切り返しは、「夢」という人物が他の誰かでもありうること、日本のみならずあらゆる場所で起きうる普遍的な世界であることに映画を跳躍させるのだ。
____諏訪敦彦(映画監督)

■ 自由は光と共にある。さりげなくも華やいだ幸福の記憶はいつも光に包まれている。女性二人が両頬に太陽の光を受け止めながら、彼方をみつめるところで映画内映画のラストカットは終わっている。自主映画の監督と主演女優。だが、ある日とつぜん、女優の自由が奪われていく。女優ひとりが、光の奪われた世界へと閉じ込められていく。その痛みも悲しみも憎しみもすべて光と、光の喪失のドラマとして描かれていく。人の肌を温め、居場所を照らし、共に光に包まれていることの幸福感を、あるいはそれが奪われていくことの痛みを、この映画は見事なまでに言葉を超えて伝えてくる。
____塩田明彦(映画監督)

 

 


 

『イマジナリーライン』Imaginary Line
2024/Japan/90min

監督・脚本:坂本憲翔

出演:中島侑香 LEIYA
   丹野武蔵 早織 松山テサ 鈴木晋介 諏訪敦彦 生津徹 Obueza Elizabeth Aruoriwo

脚本:峰岸由依、横尾千智
プロデューサー:小池悠補
撮影・照明:小澤将衡 美術:董瑶 衣装:前川睦巴 ヘアメイク:石原由樹乃
録音:坂本就 サウンドデザイン:堀修生 編集:佐藤善哉
スチール:団塚唯我 助監督:木村愼、湯淺歩夢
音楽:奥村一斗