終末感が漂う終わらない夏、忘却の予感と共に旅路をゆく女。
誰かを思い続け、その背中を追う若者たちの姿を映し出した”希望”のロードムービー。
工藤梨穂監督が京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映画学科の卒業制作として撮り
国内外の高い評価を得た鮮烈のデビュー作。
その精神的な続編とも言える『オーガスト・マイ・ヘヴン』の公開に際し、
今再び、孤児たちの果てなき源流への旅を刻む本作がスクリーンに復刻する。
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「さすらいの青春」は死語だが、その実態であるエゴは永遠に美しい。
その永遠に『オーファンズ・ブルース』は不可能な1ページを書き加えた。
青山真治(映画監督)
なにはともあれ、出ている人間たちの顔や佇まいがいい。ひさしぶりに映画で「肌」をみた。
そう簡単にこんな「強靭な肌」は映らない。夏の強い日差しに焼かれ続け、汗や涙が垂れ流れ、
ペンで文字を殴り書きされ、醜く傷つけられる、頬や額や腕や指先や首筋の「肌」が、
にもかかわらず終始ピンと張りつめ切っている。
様々な光や炎に照らされるその緊迫した肌理をみつめているうちにあっという間に終わった。
痛みまくっているはずなのになお、いやそれゆえに美しい、そんな肌の強さがしかと記録されている。
この映画も失敗や間違いの傷跡だらけと言えるかもしれず、その傷跡が見る人を惑わせることもあるかもしれないが、
そんなこと御構いなしに凛としようとしている。『もののけ姫』のサンより『オーファンズ・ブルース』の村上由規乃だ。
三宅唱(映画監督)
『オーファンズ・ブルース』Orphan's Blues
2018年/日本/89分
監督・脚本・編集:工藤梨穂『裸足で鳴らしてみせろ』『オーガスト・マイ・ヘヴン』
撮影:谷村咲貴 照明:大崎和 録音:佐古瑞季
美術:柳芽似、プロムムアン・ソムチャイ
衣装:西田伸子 メイク:岡本まりの
助監督:遠藤海里、小森ちひろ 制作:池田有宇真、谷澤亮
出演:
エマ:村上由規乃
バン:上川拓郎
ユリ:辻凪子
アキ:佐々木詩音
ルカ:窪瀬環
ヤン:吉井優