“1979年”_アンダーグラウンドカルチャーシーンに渦巻くマイノリティ・リポート!
闇の現代映画史に一筋の光をあてる、フランス映画界の新たなる鬼才!
ヤン・ゴンザレスという名の衝撃を観よ!
【STORY】
1979年、パリ。ゲイポルノ映画の女性プロデューサー・アン(ヴァネッサ・パラディ)は、映画編集者ルイス(ケイト・モラン)との終わった蜜月を諦めきれず苦悶する。そんななか、アンが制作する映画の出演男優が連続して惨殺される。アンはその現実を制作中の映画に盛り込んでゆき、ルイスを引き止め、再び振り向かせようとする。ひとり、またひとりと出演男優が凶刃に倒れ、明らかにこの映画クルーが標的にされていることが明白になり、事態は深刻さを増すが、警察はアンダーグラウンドの彼らの存在を軽んじ、本腰を入れて捜査に動こうとしない。いつ、どの瞬間に誰が惨殺されるのかわからない恐怖に包まれたままアンと彼らの映画は完成し、スクリーンに映される。そして明るみになる哀しき者の存在。そしてさらなる悲劇が訪れる。映画と現実、幻想の錯綜はどこへ行き着くのか。
【INTRODUCTION】
1970年代フランスのポルノ映画業界を舞台として、フィルム撮影の『ブレードランナー』的なダークでアンダーグラウンドな映像美に彩られ、まるで現実が安いスリラー映画のプロットのように展開していく本作は、ヤン・ゴンザレス監督が闇に包まれたフランス・ゲイポルノ映画史の断面を映像に再現。80年代アンダーグラウンドカルチャーのにおいを全編にみなぎらせ、ビザールな世界観を創出する。ゲイポルノ映画に出演する寄る辺なき同性愛者を次々と殺害してゆく仮面の殺人鬼のたただならぬ異様な情動、ゲイ映画プロデューサーが同性の元恋人に対する執着で精神を激しく揺さぶられる危うさ、映画撮影という装置(しかもゲイ映画というキッチュな)がもたらす倒錯性は、1979年当時のアンダーグラウンドゲイカルチャーの人々の息遣いをフィルムに定着させようとするヤン・ゴンザレスの意気を感じて余りある。本作のスコアを担当したM83は80年代のゲームや映画からの影響を強く打ち出すアーティストで、ヤン・ゴンザレスの弟アンソニー・ゴンザレスのソロプロジェクトによるエレクトロ・シューゲイズ・ポップ・バンドである。本作ではまるで『ブレードランナー』のヴァンゲリスを彷彿とさせるような旋律から、より幅広い表現性豊かな劇伴が各シーンに埋め込まれている。本作が指定する「1979年=パリ」という断面は非常に重要な意味を持つ。ヤン・ゴンザレスは長編デビュー作『真夜中過ぎの出会い』を経て長編第2作目の本作で2018年度カンヌ国際映画祭コンペティション部門でも大きな話題をさらい、一躍フランス映画界の新たな鬼才としてその名が刻まれたのだ。
2018年/フランス・メキシコ合作/R18+/102分
英題:Knife + Heart 原題:Un couteau dans le Coeur
監督:ヤン・ゴンザレス 脚本:ヤン・ゴンザレス、クリスティアーノ・マンジョーネ
出演:バネッサ・パラディ、ニコラ・モーリー、ケイト・モラン