1964年、16歳の処女短編「調子の狂った子供たち」から現在に至るまで精力的に映画を撮り続けている、ヌーヴェル・ヴァーグ以降のフランスを代表する映画監督フィリップ・ガレル(1948年~)。ガレル自身が自らの数多くの作品のなかで「自伝と台詞の時代」として区切る中期の代表作『救いの接吻』(89年)、『ギターはもう聞こえない』(91年)を上映します。
かつて愛した人、ニコに捧げた愛の物語
私映画の極北にして、ガレル映画のひとつの頂点を成す傑作
海辺の町で共同生活を送るジェラールとマリアンヌ、マルタンとローラの二組のカップル。一度は別れたジェラールとマリアンヌは、パリで再びともに暮らすが、次第にドラッグに溺れ生活は困窮を極めていく。最終的に別離を選び新しい家庭を持ったジェラールに、ある日、マリアンヌの訃報が届く。
フィリップ・ガレルが前妻ニコの急逝直後に製作した、極めて私的なラブストーリー。ニコとの生活と破局、息子の誕生、そして突然訪れた彼女の死。かつて愛した人との記憶と死の衝撃が、美しくも残酷にスクリーンへ映し出される。自伝的な物語でありながら、俳優たちの演技と洗練された台詞によって誕生した、普遍的な愛の物語。本作は、1991年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞し、1964年から現在までのガレルの膨大なフィルモグラフィのなかでも、あるひとつの頂点を成すといえる傑作。撮影は、今やフランス映画には欠かせない名撮影監督カロリーヌ・シャンプティエ。前作に引き続き、マルク・ショロデンコによる印象的な台詞の数々が、陰惨で残酷な物語を美しく彩る。
『救いの接吻』
1991年/フランス/98分/カラー
監督:フィリップ・ガレル
脚本:フィリップ・ガレル、ジャン=フランソワ・ゴイエ 台詞:マルク・ショロデンコ
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ 編集:ソフィー・クサン、ヤン・ドゥデ
音楽:ファトン・カーン、ディディエ・ロックウッド
出演:ブノワ・レジャン、ヨハンナ・テア・ステーゲ、ミレーユ・ペリエ、ヤン・コレット、ブリジット・シィ