アフター・オール・ディーズ・イヤーズ
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アフター・オール・ディーズ・イヤーズ

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2026

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■黒沢清(映画監督)
アジアのパワーと混沌が、ヨーロピアンな深い思索をもって構築され、最後にはまるでハリウッド映画のような興奮で観客の心を釘付けにする…世界映画の理想的なカタチがここにある。つまりこの作者はエドワード・ヤンがやったさらにその先を提示しようとしているのだ。彼の名前はリム・カーワイ、是非とも覚えておかねばなるまい。

■筒井武文(映画監督/東京藝術大学大学院映像研究科教授)
第1作にして、この完成度。リム・カーワイの『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』には、心底驚かされた。10年ぶりに帰郷した青年を家族をはじめ、街の誰もが覚えていない。狂っているのは、自分か、世界か。その場の関係性をワンショットで描き切る。それどころではない。世界の陰謀が明かされそうになると、それを超える不条理が見事なモノクロ画面に定着され、今度は内容を映画形式が凌駕していくことになる。15年前に撮られた傑作を遅れてきた観客として発見すること。しからば、リム・カーワイ世界の進展という追体験の愉しみが待っている。

■樋口泰人/boid主宰・映画批評家
まるで太古の昔より根を張りそこにあったのだとでも言うかのような振る舞いを見せる登場人物や街の風景に貼りついた、しかし明日はどうなるかまったくわからないといったどこか無責任で限りなく危うい浮遊感。それはおよそ0.12ミリという35ミリフィルムの薄さのもつ頼りない存在感とも言い換えられるだろう。リム・カーワイは初の長編であるデジタル作品で、その半透明の怪しい揺らめきを見事に映し出したのだ。そこでは現在が当たり前のように融解して過去や未来になだれ込み、「今ここ」という現在を形作るいくつもの地層を暴き出すだろう。フィルムの連なりとも言える、見るものすべてをそんな「映画」へと誘うミステリートレインは絶賛走行中である。荒野を走るその長い長い列車を見たら、誰もが「映画」の世界へと連れ去られるに違いない。

 

 

『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』After All These Years
2010/マレーシア・中国・日本/98min
*2025デジタルリマスター

出演:大塚匡将 ゴウジー(狗子) ホー・ウェンチャオ(何文超)

監督・脚本:リム・カーワイ

撮影:メイキン・フォン・ビンフェイ(馮炳輝)
録音:山下彩
編集:奥原浩志、Phillip Lin
美術:Amanda Weiss
音楽:Albert Yu

配給:Cinema Drifters 宣伝:大福