イメージフォーラムフェスティバル / 東アジアエクスペリメンタルコンペティションでの史上初となる二度の大賞受賞や、北米最古で あり世界最大級の実験映画祭、アナーバーフィルムフェスティバルでのグランプリの受賞など、アートフィルム、実験映画の分野において 国内外で高い評価を受け注目を集めている映像作家、磯部真也。本特集上映では 2009 年から 2020 年の間に制作された短編作品と、 2022 年の中編「ユーモレスク」を上映する。個人表現としての映画を追求しながら、その視点はあらゆる時間、場所を超越してゆく。 その作品世界にぜひ触れてほしい。
【上映作品】合計:100min
『dance』
2009/8mm → digital/6min
出演:伊藤らん
一人の女性と、彼女の住む部屋を被写体とした作品。8mmフィルムの長時間露光撮影を用い、部屋に堆積している時間や記憶を映像で表現しようと試みた。
『EDEN』
2011/16mm/15min
スタッフ:伊藤らん、大谷理仁、青木岳明、深串大樹
岩手県八幡平市にある巨大廃墟、急松尾鉱山跡。かつてその場所は「雲上の楽園」と呼ばれ、一万人の暮らしがあった。十数棟の鉄筋コンクリートの建物はゆっくりと朽ち果てながら、それでも未だあり続けている。この作品ではその場所に在る、永遠と無常という相反する時間を描き出そうとしている。
『For rest』
2017/16mm/17min
音楽・音響:磯部裕介 ピアノ:深串大樹 声:伊藤らん
協力:鉢村岳明、大谷理仁、山崎剛弘、小野志乃芙
死を想像した作品。生と死を分け隔てその距離を遠ざけようとする人間の死生観と、自然における生命の循環を対比し、その両方を描き出す。森の中に設置した食卓というモチーフを5年に渡り撮影し続け、その果てに見出される言葉を超えたドラマに挑戦した。富士山の麓の青木ヶ原樹海をモデルとしている。
『13』
2020/16mm → digital/10min
沈みゆく太陽を16mmフィルムによって毎日撮影し続けた作品。同アングル、同ポジションからのインターバル撮影と多重露光を繰り返し、5年間の太陽をフィルムに焼き付けた。これは天体記録でもあり、作者個人の感情的なイメージの創作とも言える。タイトルの『13』は13秒間隔でインターバル撮影を行なっていた事に由来する。
『ユーモレスク』
2022/digital/46min
出演:磯部永和、磯部らん、磯部裕介、河端健太
協力:磯部らん、磯部裕介、三浦大樹
整音:磯部裕介
何処なのか、いつなのかも分からない架空の世界。荒涼とした風景の中に生きる母と子。質素な暮らし、日々の小さな物語、遠くの大きな物語、ただ穏やかに時が過ぎていく。ある日二人のもとへ男が尋ねてきて、緩やかに物語が浮かび上がり始める。作者が自身の家族にカメラを向けながら、架空の世界を作り出したSFホームムービー。
『April』
ワーク・イン・プログレス/16mm → digital/6min
作者の住む町に流れる小川を撮影した作品。川の流れと時間の流れの関係を切り口として16mmフィルムで撮影した映像を、デジタルによって複製し重ねている。アナログとデジタル、具象と抽象の間で乱反射する光と時間。