すべてのモラルを破壊して、欲望は衝突する。
問題作であり唯一無二。異形の傑作がクローネンバーグ監督自身の監修により完全なる形でよみがえる。
F・フォード・コッポラが猛反対、マーティン・スコセッシが大絶賛。
フェティシズムの最果てを描いた究極のR-18問題作が鮮やかに蘇る。
【INTRODUCTION】
SF作家J・G・バラードによる同名小説を、『ザ・フライ』(86)、『裸のランチ』(91)などで知られるカナダの鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督が映画化。自動車事故により性的興奮を覚える人々を描いた危険度100%究極の偏愛を描いた傑作が、製作から25年を迎え鮮烈に帰ってくる。当時、審査委員長を務めたフランシス・フォード・コッポラからは反対されるも、第49回カンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞。フランスの映画雑誌「カイエ・ドゥ・シネマ」が選ぶ1996年の映画ランキングで堂々の1位を獲得。さらにマーティン・スコセッシ監督が選ぶ1990年代のベスト映画にもランクイン、と数々の称賛を浴びる一方で、その過激な性描写が問題視され、イギリスの新聞「デイリー・メール」紙が1面で上映禁止を呼びかけるなど、賛否両論を巻き起こした。
撮影は『戦慄の絆』(88)以降のクローネンバーグ作品全てで撮影を手掛けたピーター・サシツキーが担当。今回の上映素材は、長らく消失したと思われていた35mmオリジナルネガがカナダで発見されたことを機に3ヶ月かけてサシツキー監修のもと4K化し、クローネンバーグが最終承認を与えた素材である。全編の8割以上がセックスシーンである本作へ果敢に挑んだのは、主人公ジェームズ役に、『セックスと嘘とビデオテープ』(89)のジェームズ・スペイダー。貪欲に自身の欲望に没頭するヘレン役に、『ピアノ・レッスン』(93)のホリー・ハンター。ボンテージファッションに身を包む女性ガブリエルにロザンナ・アークエット。その他、ジェームズの妻キャサリンにはデボラ・カーラ・アンガー。彼らを結びつける謎の男ヴォーンにはイライアス・コティーズなど個性豊かな俳優陣が集結。死と隣合わせの危険な快感への目覚め、人体損壊と車体の破損への欲求と美意識……。後戻りできない世界にどこまでも堕ちていく姿を、クローネンバーグならではの映像世界で描ききった異常に満ちた唯一無二の傑作。危険な欲望への扉が、ふたたび開かれる。
【STORY】
ある日、映画プロデューサーのジェームズは車で正面衝突事故を起こす。相手のドライバーは死亡、助手席に乗っていたドライバーの妻ヘレンはジェームズとともに病院へ搬送される。院内を歩き回れるほど回復したジェームズは夫の死になぜか平然としているヘレンと彼女に付き添う不思議な男ヴォーンと顔を合わし、事故の写真を見せられる。退院後、ジェームズとヘレンはそれぞれ事故の衝撃を通して思わぬ性的興奮を感じていた……。再会した2人はセックスに及び、事故の体験により新たなエクスタシーを開拓するグループ=カー・クラッシュ・マニアの会の存在を知り、その世界にのめり込んでいく。
出町座 秋のクローネンバーグまつり 2023
1996年/CANADA/英語5.1chサラウンド/日本語字幕/DCP/100分/R18+
原題:CRASH
提供:TCエンタテインメント、是空、ザジフィルムズ
配給・宣伝:アンプラグド
監督・製作・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ
原作:J・G・バラード
撮影:ピーター・サシツキー
音楽:ハワード・ショア
出演:ジェームズ・スペイダー、ホリー・ハンター、イライアス・コティーズ、デボラ・カーラ・アンガー、ロザンナ・アークエット