のんきな姉さん(デジタルリマスター版)
2004年/87分/35mm>DCP
出演:梶原阿貴、塩田貞治、大森南朋、梓、佐藤允、三浦友和、細田玲菜、細田晃慶
原作:山本直樹 脚本:七里圭 撮影:たむらまさき 音楽:侘美秀俊 編集:宮島竜治
目覚めれば目覚めるほど夢に近づいていく、不思議な感触の長編劇場公開映画第一作。七里はこのデビュー作を監督するにあたり、敬愛する山本直樹の同名漫画を原作にして、その漫画の霊感源、唐十郎『安寿子の靴』、森鴎外『山椒大夫』までを射程に収めた。
La Boussole
2021年/8分/HD
監督:七里圭 音楽:檜垣智也 出演:吉増剛造
“方位なき方位”に針路をとる航海。2020年早春、COVID-19によるロックダウン寸前のパリLeCUBEで滞在制作、発表した映像ライブ作品のシングル・スクリーン版。
【劇場公開15周年記念】
眠り姫(サラウンドリマスター版)
2007年-2016年/80分/HD・5.1ch
声:つぐみ、西島秀俊、山本浩司、大友三郎、園部貴一
原作:山本直樹 監督:七里圭 撮影:七里圭、高橋哲也 音楽:侘美秀俊
2007年の初公開以来、毎年の再上映が10年続いたことを記念して作られたリマスター版。
ステレオだった音響をサラウンドに拡張するに際し、「闇の中の眠り姫」やアクースモニウム上映など、冒険的な上映活動での経験が生かされた。
夢は、体が眠っているのに脳は活動している半覚醒状態に現れるが、冒頭、夜が朝へと移りゆくまどろみの時間を映し出す本作は、全編、夢の中の出来事かのように思わせる。ほとんど人の姿が映らない空っぽの風景にさざめく、濃密な人の気配と声。静かに狂気を孕んでいく男女の日常が、美しい朝焼けや薄明の光景とともに、声や物音だけでつづられていく。山本直樹原作の同名漫画は、幻聴を主題にした内田百閒『山高帽子』を下敷きにしている。2007年の初公開から毎年アンコール上映が繰り返されているほど、熱狂的なファンを持つカルト映画。なぜ人々がこの作品に魅かれ続けるのか、それは観た者にしか分からない。
【特別上映】
村上春樹ライブラリー・イメージ映像「The Strange Library」
2021年/10分/HD
監督:七里圭 撮影監督:高橋哲也 録音・効果:佐藤恵太 音楽・整音:宇波拓
出演:川端もくは、箕西祥樹
製作 早稲田大学国際文学館
早稲田大学に2021年開設された村上春樹ライブラリーのイメージ映像。
夜の図書館に現れた少女の影。影は、身動きのとれない少年のヒトガタと出会う。ヒトガタは、影に淡い恋心を抱く。心は灯となって浮遊し、影のあとを追うが……。
村上春樹氏の国際アンデルセン文学賞受賞スピーチにインスパイアされた。
ホッテントットエプロン‐スケッチ
2006年/70分/DV
出演:阿久根裕子、井川耕一郎、ただてっぺい、大川高広
原案:新柵未成 監督:七里圭 撮影:七里圭、高橋哲也 音楽:侘美秀俊 人形:清水真理
製作:愛知芸術文化センター
生きていくことの恐ろしさと喜びに、戸惑う一人の少女の心の旅を、繊細に象徴的に描く、言葉のない詩、映像の寓話。愛知芸術文化センターの「身体」をめぐる連続企画として製作された作品。一切の台詞を排したこの映画は、たびたび音楽をライブ演奏する上映が行われ、演奏の度に音楽は進化/深化している。(★今回の上映ではライブ演奏はありません)
夢で逢えたら
2004年/20分/35mm>DCP
出演:安妙子、大友三郎
監督:七里圭 撮影:高橋哲也、鈴木明彦 音楽:侘美秀俊 編集:宮島竜治
まるで夢の中に迷い込んでしまったような、寄る辺ない不思議な切なさを湛えた実験的な短編。この映画はサイレントではない。しかし、二人の登場人物を取り巻く現実の状況音から、彼らの声だけが抜き取られているので、何を話しているのか分らない。声が失われた世界でのボーイ・ミーツ・ガール。欠如を抱えた映像として『眠り姫』、『ホッテントットエプロン』の原型であり、以後の長編を胚胎している重要な作品。