日仏共同監督作品『泳ぎすぎた夜』公開記念!
五十嵐耕平監督×ダミアン・マニヴェル監督作品週替り上映!
息を殺して沈黙した時、いつか誰かが生きた物語がはじまる。
東京オリンピックを約二年後に控えた2017年12月30日。すでに憲法も改正され国防軍が創設されている時代状況の中、ゴミ処理工場に一匹の犬が迷い込む。事務のタニちゃんは犬を探すが見つからない。夜勤を終えたケンは、この日非番のゴウとTVゲームをして遊んでいる。足立さんは帰ろうとせず、ヤナさんは新年の飾り付けに勤しんでいる。しかし彼らは皆同じような問題を抱えていたのだった。妊娠、不倫、家族、戦争で死んだ友達。
そんな中、 足立さんとの不倫関係に思い悩むタニちゃんだったが、いつしか既に死んだはずの元工場長の父親が、この場所にいるのではないかと感じ始める。
過去と未来を呼び込む、現在の映画の誕生
無人で稼働する巨大な工場。果てしなく続く廊下を歩き一人ぽつんと佇む。人々の言葉は小さく、意思を失った身体はまるで幽霊のように彷徨う。かつてあったものや、いつか訪れるなにかを息を殺して待ちながら、ここにはいない誰かに思いを馳せること・・・。
監督は諏訪敦彦監督や黒沢清監督に師事し、初長編『夜来風雨の声』が海外で評価を受けた五十嵐耕平。機械の音が支配する巨大工場内でほぼ全編を撮影した本作は、「素晴らしいアイデアで、ある社会の姿を表している。がらんとした空間に遊びとしての戦争を取り入れ、また現実とSF的な未来をミックスさせている。そのスタイルが非常に特別だ」として第67回ロカルノ国際映画祭新鋭監督コンペティション部門に出品された。
五十嵐耕平という新しき才能が日本映画の枠をはみ出し、映画の可能性に息吹を吹き込む。間違いなく今観ることに意味のある、現在の映画が誕生した。
2014年/日本/DCP/85分
監督・脚本:五十嵐耕平
出演:谷口蘭、稲葉雄介、嶺豪一、足立智充、原田浩二、稲垣雄基、田中里奈、あらい汎、のぼ
プロデューサー:大木真琴、加藤圭祐
助監督:廣原暁 撮影・照明:髙橋航
録音・整音:稲村健太郎 編集:姜銀花 美術:河股藍
衣装:谷本佳菜子 音楽:Sleepy Lemon + YSD & The Tinker
配給・宣伝:NOVO 製作:東京藝術大学大学院映像研究科