第2回 映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~ in 関西

上映スケジュール

2020/4/10(金)〜4/15(水)

4/10(金)19:40(〜21:05終)『今晩おひま?』
4/11(土)19:40(〜21:20終)『マダム・ハイド』
4/12(日)19:40(〜21:15終)『言い知れぬ恐怖の町』
4/13(月)19:40(〜21:05終)『赤いトキ』
4/14(火)19:40(〜21:26終)『ティップ・トップ ふたりは最高』*同志社大学寒梅館で予定していた上映を出町座で行います。
4/15(水)19:40(〜21:19終)『マダム・ハイド』

*3月開催プログラムは終了しました。
**上映時間未記載のものは確定次第掲載します。

料金

一般1500円、シニア1100円、会員(シネ・ヌーヴォ、出町座、クラブ・フランス)・学生1000円
*招待券使用不可

公式サイト


この度、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け、4月に登壇を予定していたセルジュ・ボゾン監督の来日がキャンセルとなりました。
楽しみにしてくださった皆様方にはご迷惑をおかけし申し訳ございませんが、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

また、出町座での映画作品の上映については予定通り実施の方向です。
また、4/14(火)に同志社大学寒梅館で予定されていた『ティップ・トップ ふたりは最高』の上映を出町座で行います。
どうぞよろしくお願いいたします。


Mois de la critique – Nouveaux rendez-vous du cinéma français Vol.02
第2回 映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~ in 関西

昨年よりスタートした「映画批評月間」では、フランスの映画媒体、批評家、専門家、プログラマーと協力し、最新のフランス映画を選りすぐり、ご紹介しています。

第2回目となる今回は、フランスだけではなく、世界中の主要な映画作家たちの製作を積極的に支援しているアルテ・フランス・シネマ ディレクター、元ロカルノ映画祭ディレクターのオリヴィエ・ペールを依頼。フランスの近作より最も優れた作品を選出いただきました。それらの作品の上映とともに、日本の映画批評家たち、監督たちと同氏のディスカッションも予定しています。そのセレクションの一本『マダム・ハイド』の監督セルジュ・ボゾンを特別ゲストに迎え、ミュージカルコメディから、歴史劇、学園ものから犯罪映画まで、その多彩なフィルモグラフィーを一挙ご紹介します。

ボゾン監督ほか多くの映画人に敬愛を受け、2019年8月に惜しくもこの世を去ったジャン=ピエール・モッキーを併せて特集します。コメディ、サスペンスと独自の作風を持ち、カルト的人気を誇るモッキーは日本でこれまでほとんど紹介されることがありませんでした。フランス映画の「最後の切り札」とも言えるモッキーの世界をぜひこの機会に発見ください。
 


 

アルテ・フランス・シネマ Arte France Cinéma

アルテ(Arte、Association Relative à la Télévision Européenne)は、1992年5月30日に開局したドイツとフランスの共同出資によるテレビ局で、フランス語およびドイツ語で放送。アルテ・シネマ・フランスは同局の映画部門。1990年、プロデューサーのピエール・シュヴァリエが同テレビ局で良質のテレビプログラム・映画作品を製作すべくセット=アルテからセット・シネマを立ち上げた。2000年にセット=シネマは新たにアルテ・フランス・シネマに。アサイヤス、アケルマン、クレール・ドゥニらがそれぞれ自らの思春期について撮ったシリーズ「彼らの時代のすべての少年、少女たち」はシュヴァリエによる企画。創立以来、アルテ・フランス・シネマは良質なプログラムを提供し、新しい才能を支援し、ヨーロッパのみならず世界中のクリエーションに活力を与えることをその役割としている。2012年より、オリヴィエ・ペールがディレクターに就任。ワン・ビン、ジャ・ジャンクー、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン、アリーチェ・ロルヴァケル、マルコ・ヴェロッキオ、ラヴ・ディアス、黒沢清ほか数多くの作家たちの作品を製作支援している。
 

Olivier Père オリヴィエ・ペール

1971年フランス生まれ。シネマテーク・フランセーズで、シネマテークの上映プログラムの企画に携わる一方で、「レ・ザンロキュプティーブル」誌などで映画批評を執筆。2004年から2009年まで、カンヌ国際映画祭監督週間のディレクター、2008年から2012年までロカルノ国際映画祭のディレクターを務める。同映画祭のディレクション中、富田克也の『サウダージ』、三宅唱の『Playback』などがコンペティションに選ばれ、2012年には青山真治に金豹賞(グランプリ)審査員特別賞が贈られた。2012年にアルテ・フランス・シネマのディレクターに就任、以後、ヨーロッパをはじめ、世界中の映画作家の作品を支援し、共同製作を続けている。またアルテのサイト(http://www.arte.tv/sites/olivierpere/)にて定期的に映画評も執筆し続けている。
 
 
 
 

◆Best of 2019 – séléction d’Arte 2019年アルテ共同製作作品


 

見えない太陽 L’Adieu à la nuit d’André Techiné

フランス=ドイツ/2019年/102分 ★3/6(金)18:30〜上映!
監督:アンドレ・テシネ 出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ケイシー・モッテ・クライン、ウーヤラ・アマムラ

2015年春。地方で牧場や農場を営むミュリエルは、久しぶりに帰ってきた孫息子アレックスとの再会に心躍らせる。しかしアレックスがイスラム教に入信し、しかもその教団がシリアのイスラム教テロリストたちとつながりがあり、アレックス自身もシリアに向かおうとしていることを知ったミュリエルはなんとか彼を引きとめようとするのだが……。ドヌーヴがもっとも信頼を置くと明言している名匠アンドレ・テシネとの8本目の本作で、つねに目の前の対象に開かれ、その度に繊細な演技をみせてきた大女優の魅力が最大限に引き出されている。

*DVD発売中:KKDS-891 4,800円(税抜) 発売元:ビターズ・エンド、ミッドシップ 販売元:紀伊國屋書店
 


 

ディアスキン鹿革の殺人鬼 Le Daim de Quentin Dupieux

フランス/2019年/77分 ★3/7(土)18:55〜上映!
監督:カンタン・デュピユー 出演:ジャン・デュジャルダン、アデル・エネル ほか

鹿革ジャケットを手に入れたジョルジュは、異常なまでにそのジャケットに愛着を抱く。ひょんなことからビデオカメラも手にしたジョルジュは、ジャケットを羽織り、映画監督に扮して街へ繰り出し、“死のジャケット狩り”を開始する。フランスのエレクトロニックミュージシャン、DJとしても著名なデュピューがジャン・デュジャルダンと初めて組んだスリラーで、2019年カンヌ国際映画祭監督週間のオープニングで上映され人気を博した。注目の女優アデル・エネルがたった一人、狂気に包まれた男に勇ましく対峙していく姿が強く、美しい。
 


 

シノニムズ Synonymes de Nadav Lapid

フランス=イスラエル=ドイツ/2018年/123分/R15+ ★3/8(日)18:15〜上映&オリヴィエ・ペール氏によるアフタートークあり。
監督:ナダヴ・ラビド 出演:トム・メルシエール、カンタン・ドルメール、ルイーズ・シュヴィヨット

「『シノニムズ』は、パリの空っぽのアパルトメントで凍えそうになった裸体と共に、象徴的な死とある誕生によって幕を開ける。物語は、祖国イスラエルからパリへと亡命し、文化、言語、国、すべてを白紙に戻し、未知の場所でゼロから生きることを選んだラビド監督自身の人生から着想を得ており、主役のヨアブは監督の分身であるだろう。本作はラビドがこれまで続けてきた試みのひとつの到達点でもある。それは通常なら詩的なものからほど遠いであろう憎しみや嫌悪の言葉や映像を結びつけ、それらの衝突の中から、そして視線の中から美を導き出すという試みである」。オリヴィエ・ペール
69回ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。
 


 

リベルテ Liberté d’Albert Serra

フランス=ポルトガル=スペイン=ドイツ/2019年/138分/R16+ ★3/10(火)18:10〜上映!
監督:アルベルト・セラ 出演:ヘルムート・バーガー、マルク・スジーニ、イリアーナ・ザベート、リュイス・セラー

ジャン=ピエール・レオ主演の『ルイ14世の死』が日本でも公開された鬼才アルベルト・セラが今度はフランス革命前夜の18世紀の退廃貴族たちの性、欲望のありか、サド的世界に迫る。ルイ16世のピューリタン的厳格な宮廷から追放された自由主義者達(ルビ:リベルタン)は、伝説的ドイツ人公爵ワルシャンの支援を求めて国境を越える。2019年カンヌ国際映画祭「ある視点部門受賞作品。「私にとって撮影とは上演(パフォーマンス)であり、一度限りのものだ。演じられている中で生まれるもの、感情を、それぞれが自律的な3台のキャメラで撮影し、それらは再び生み出すことが不可能であり、とくにセックスが題材であればなおさらそうである。」(アルベルト・セラ)
 


 

君は愛にふさわしい Tu mérite d’un amour de Hafsia Herz

フランス/2019年/107分 ★3/11(水)18:25〜上映!
監督:アフシア・エルジ 出演:アフシア・エルジ、ジェレミ・ラウルト、ジャニス・ブジアニ、ジェレミ・ラウルト ほか

何よりも大切な恋人レミの裏切りを知り、リラは苦しむ。単身ボリビアに旅立ったレミから、二人の関係はまだ終わっていないと告げられるが、その言葉によってさらに苦しむリラは、友人たちとの会話、新たな出会いの中でもがき、愛の行方を求めて彷徨う…。寄る辺なく生きる現代の若者たちの恋愛をアブデラティフ・ケシシュやアラン・ギロディらの作品に出演している女優、エルジが初監督、主演。第72回カンヌ国際映画祭批評家週間で上映され、「宝石のように美しいラブストーリー」と絶賛された。タイトルはフリーダ・カーロの詩の言葉。
 


 

アリスと市長 Alice et le Maire de Nicholas Pariser

フランス=ベルギー/2019年/105分 ★3/12(木)18:25〜上映!
監督:ニコラ・パリゼール 出演:ファブリス・ルキーニ、アナイス・ドゥモスティエ、ノラ・ハムザウほか

リヨンの市長ポール・テラノーは、「考え」が一切浮かばなくなり、若き哲学者アリスに助けを求めることに。『木と市長とメディアテーク』では高校教師を揚々と演じたルキーニが26年後、まさにロメール的コメディで、燻し銀の魅力で老いとともに人生を見つめ直す市長を演じる。そして、大きな瞳と溌剌とした魅力で、観客の心を捉える人気の若手女優、ドゥムースティエ演じる哲学者との真摯で、遊戯に満ち、心打たれる対話によって、互いに「思考」を、そして「人生」を取り戻していく。第72回カンヌ国際映画祭監督週間出品。

 


 

セルジュ・ボゾン特集 Rétrospective Serge Bozon

セルジュ・ボゾン

1972年、フランスのエクス=アン=プロヴァンス生まれ。1988年に初めての長編作『友情』を発表し、その名を知られることになる。次作『モッズ』(2003)では、作風をがらりと変えたミュージカルコメディで反響を呼び、ベルフォール国際映画祭にてレオ・シェア賞を受賞、その他30以上の国際映画祭にノミネートされる。また3年後に発表した、第一次世界大戦を描いたシルヴィー・テステュー主演の『フランス』(2007年)では、ジャン・ヴィゴ賞を受賞、カンヌ国際映画祭の監督週間に招聘される。その後、イザベル・ユペール、サンドリン・キーベルラン、フランソワ・ダミアン出演によるコメディ『ティップ・トップ ふたりは最高』(2013)を製作、カンヌ国際映画祭の監督週間にて上映。さらにイザベル・ユペール主演の最新作『マダム・ハイド』では、第70回ロカルノ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門に選出される。また監督以外にも映画批評家として、「カイエ・デュ・シネマ」、「So Film」などの映画雑誌に寄稿。俳優としても『倦怠』(セドリック・カーン)、『青の寝室』(マチュー・アマルリック)などに出演している。
 


 

マダム・ハイド Madame Hyde

フランス/2017年/96分 ★4/11(土)上映、4/15(水)上映&セルジュ・ボゾン監督×廣瀬純さんトークあり。
出演:イザベル・ユペール、ロマン・デュリス、ジョゼ・ガルシア ほか

パリ郊外の高校に勤める内気な物理学の女性教師ジキルは生徒たちから見下されている。ある日、彼女は、実験中に失神し、神秘的で危険な力を感じるようになる。スティーヴンソンの代表作『ジキル博士とハイド氏』を、19世紀後半のブルジョワ社会ではなくパリ郊外、現在を舞台に、また男性ではなく女性を主人公に、自由に脚色されたボゾンの最新作。
「トリュフォーが『野生の少年』で試みたように、学ぶということを映画でどう描くか、教育の重要性、難しさを見せたかった。そのため、冒頭で主人公はまだにそこに至っておらず、ふつうの方法では変えられない状況にいる。そこにスティーヴンソンが介入してくるわけだ。」(セルジュ・ボゾン)
 


 

ティップ・トップ ふたりは最高 Tip Top

フランス=ルクセンブルク/2013年/106分 ★4/14(火)出町座にて上映!★4/14(火)同志社大学寒梅館クローバーホールにて上映&セルジュ・ボゾン監督×廣瀬純さんトークあり。
出演:イザベル・ユペール、サンドリン・キーベルラン、フランソワ・ダミアン、キャロル・ロシェ

フランス北部でアルジェリア系の情報屋が殺された。その情報屋は、地域のドラッグの密売に関わっていたが、警察署内部を探るため、ふたりの女性監察官、エスターとサリが派遣された。ひとりは殴りこみをかけ、もうひとりは覗き見る…そう、ふたりは最高のコンビ!__「ボゾンはかつてゴダールが取った方法を応用してみせる。犯罪映画を口実にまったく別のものを語ること。では本作では何が語れているのか、おそらく傑出した前作のタイトルの中にその答はあるだろう、つまり『フランス』である。(オリヴィエ・ペール)

 


 

ジャン=ピエール・モッキー特集 Rétrospective Jean-Pierre Mocky

ジャン=ピエール・モッキー

1933年ニース生まれ。長編だけでも67本の作品を監督し、フランス映画の中でもどこにも分類できない、ユニークな映画作家。法律の勉強を終えた後、フランス国立高等演劇学校に入学後すぐ、舞台、映画界の両方でその美貌と才能で一気に若手俳優として頭角を現す。ルキノ・ヴィスコンティ監督作『夏の嵐』で助監督を務め、その後、脚本を書き、自ら監督を希望した『壁にぶつかる頭』(1958年)は結局、ジョルジュ・フランジュが監督し、主演することに。1959年にようやく処女長編作『今晩おひま?』を監督し、商業的、批評的に成功を収める。「ヌーヴェルヴァーグの従弟」のような作品と評されるが、風刺的でメランコリック、そして類をみない反体制的な作風でほかとは一線を画し、メインストリームから外れた場所で、自由に映画を撮り続ける。ラブコメディから風刺的コメディ、あるいは犯罪映画や軍隊もの、政治的作品から幻想的な作品まで、ひとつのジャンルにおさまることなく、慣例化された制度、価値には反旗を翻し、アナーキーな世界観や荒々しいまでのユーモアを一本ごとに刻印してきた。そうしたモッキーの魅力は多くのスター俳優たち、フェルナンデル、ミシャル・シモン、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャンヌ・モローを引きつけ、彼の作品に出演している。名優ブールヴィル、ミシェル・セローとは特に多くの作品でタブを組んできた。2019年8月8日逝去、享年86歳。
 
 
 
 
 
 
 


 

今晩おひま? Les Dragueurs

フランス/1964年/78分/モノクロ ★4/10(金)上映!
出演:ジャック・シャリエ、シャルル・アズナブール、ダニー・ロバン、アヌーク・エーメ ほか

土曜日の夕暮、フレディとジョゼフは、セーヌ河岸で偶然出会い、女の子を「ひっかけに」街に繰り出す。二十歳の装飾家でプレイボーイのフレディは「理想の女性」を探し求めている。かたやまじめな銀行員ジョゼフは妻を見つけ、家庭を持つことを望んでいる。アンバリッド、サン=ジェルマン=デ=プレ、シャンゼリゼ通り、モンマルトル、彼らは、様々な女性たちと出会い、彼女たちの人生を垣間見ることに。29歳のジャン・ピエール・モッキーが自伝的な要素を交え、ささやかなテーマながら大胆な作風で、ほとんどロケで撮り上げた処女作。日本で公開された唯一のモッキー監督作品でもある。
 


 

言い知れぬ恐怖の町 La Cité de l’indicible peur

フランス/1964年/92分/モノクロ ★4/12(日)上映!
出演:ブールヴィル、フランシス・ブランシュ、ジャン・ポワレ、ヴェロニク・ノルデー ほか

逃亡した偽札偽造者の捜索に乗り出したシモン・トリケ警部は、オーヴェルニュ地方の想像の村、バルジュにたどり着くのだが、そこには摩訶不思議な住民たち、出来事があふれていた……。ベルギーの幻想小説家ジャン・レーの原作を自由に、幸福感と繊細さとともにモッキーが映画化。モッキー作品にかかせない俳優のひとりブールヴィルが風変わりな警部役を魅力一杯に演じている。撮影はラング、オフュルス、ロッセンらの作品も手がけた偉大なカメラマン、オイゲン・シュフタン。製作当時あまりにも「とっぴな」作品とされ再編集を強いられたこの傑作「詩的幻想映画」を、今回は監督自ら「ディレクター・カット」として蘇らせたバージョンで上映!
 


 

ソロ Solo

フランス/1970年/87分 ★3/9(月)18:45〜上映&オリヴィエ・ペールさん×北小路隆志さんトークあり。
出演:ジャン=ピエール・モッキー、アンヌ・ドゥルーズ、デニス・ル・ギヨ ほか

魅惑のヴァイオリン奏者のヴァンサン・キャブラルは宝石泥棒でもある。彼の弟のヴィルジルはアナーキストのグループに属していて、殺人にも手を染めていた。ヴァンサンはこれ以上の殺戮が繰り返されないように、警察より先回りしてヴィルジルを追いかけるのだが……。「70年代、モッキーはB級犯罪映画を自ら主演し、連続して撮っている。アクションに次ぐアクション、そして演出のアイディア満載の本作は68年五月革命直後についてのモッキー自身の考察から出発している。シニックなアンチヒーローを演じるモッキー、ジョルジュ・ムスタキのテーマ曲によって愁いを帯びたロマンチシスムに包まれたフィルムノワール。」(オリヴィエ・ペール)
 


 
 
 

赤いトキ L’Ibis rouge

フランス/1975年/80分 ★4/13(月)上映!
出演:ミシェル・セロー、ミシェル・シモン、エヴリーヌ・バイル

孤独な会社員ジェレミーは赤いマフラーで次から次に女性たちを絞め殺してきた。同じ界隈に住み、賭博好きレーモンは、借金を返済するために愛する妻のエヴリーヌに宝石を売るよう頼む。そんなふたりが出会い、ある計画が立てられることに……。「フレドリック・ブラウンの推理小説『3、1、2とノックせよ』から着想を得た本作は、ファンタスティックかつポエティックにフランス社会を描いたモッキーの代表作のひとつ。本作が遺作となった偉大な俳優ミシェル・シモンへのオマージュでもあり、サン=マルタン運河沿いで多く撮られていることもあり、とりわけ『素晴らしき放浪者』や『アタラント号』の記憶が蘇ってくる。」(オリヴィエ・ペール)
 
 
 
 

 
*左から『今晩おひま?』『言い知れぬ恐怖の町』
 
 
*左から『ソロ』『赤いトキ』

 


 

Compagnon de route et de voyage des films aimés
愛する作品と共に旅を続けること

オリヴィエ・ペール

 映画作家を発見し、その作家が一本、また一本と撮り続けていくために支援する、そしてまた他の作家たちへの賞賛を示し、彼らが作品を生み出してく手助けをする。2012年以来、アルテ・フランス・シネマのディレクターに就任したことで、それまでの12年間、カンヌ国際映画祭監督週間、そしてロカルノ国際映画祭でディレクターとして実行してきたそうした活動を、今日まで引き続けてきました。現在、世界における主要な映画作家たちの作品の共同製作に参加するだけでは十分でなく、そうした作品が観客たちと出会うその重要な瞬間に寄り添い、映画作家たちとは実り豊かな対話を作り出していくことが重要です。アンスティチュ・フランセ 日本の提案により、今回初めて日本の映画ファンたちに向けて、アルテが支援している映画作品のセレクションを紹介する機会を得ました。本プログラムでご紹介するのはとくに私たちが大切に思っている作品たちであり、自由で野心的な映画を支援してきたアルテの精神を体現している作品ばかりです。カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭の様々な部門に出品されるヨーロッパ、そして世界中の映画作品の中で、アルテ・フランス・シネマは現代映画作家たちの映画への関わりを強く示してきました。ドキュメンタリーからアニメーション、映画の様々なジャンルの再読解を試みる作品から社会への視線を基軸にした作品、現代に根を下ろしたフィクションから、より奔放なる想像力の探求まで、あるいはそのすべてを包括した作品。そうしたインスピレーションに溢れた映画作家たちに耳を傾け、斬新な作品に寄り添い続けたいという私たちの意思は尽きることがありません。映画の創造に乗り出す新顔の監督たちをとくに支援し、一作目、二作目に重要な場所を与えてきました。こうした若い世代の映画作家たちの勢いはまた女性監督たちにもあてはまるでしょう。新人の女性監督たちの中で、とくにマッティ・ディオップ(『アトランティックス』、カンヌ国際映画祭グランプリ受賞*現在、Netflixで放映中)、アフシア・エルジ(『君は愛にふさわしい』)、ザブー・ブライトマン&エレア・ゴべ・メヴェレック(『カブールのツバメ』)が2019年に素晴らしい作品を発表し、観客にも批評家たちにも温かく迎えられました。多くの女性監督、しかもそのほとんどが新人監督による作品を支援できたこと大変喜ばしく思っています。世界は変化し、そこに向けられる視線も変化している、映画による刺激的冒険はそのことを私たちに伝えてくれます。そうした「新たな視線」こそ歓迎し、応援すべきでしょう。

アルテは未来の巨匠となるであろう若い才能の出現を注意深く見据えてきました。私たちの主な目標はまさにそうした才能溢れる作家たちの重要な瞬間を発見し、支援することです。そうした作家の一人であり、早い時期から――そして当然のこととして――その才能が認められたナダヴ・ラピドは、長編三作目にあたる『シノニムズ』で見事ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞しました。その他、アルベルト・セラ(『リベルテ』、次回作『ボラ・ボラ』をすでに準備中)、ニコラ・パリゼール(『アリスと市長』)、セルジュ・ボゾン(『マダム・ハイド』)、カンタン・デュピュー(『ディアスキン鹿皮の殺人鬼』)、私たちが共同製作に関わったこうした作家たちはそれぞれがフランス映画に刺激的な活気を与え、魅力的で、多様な要素が詰まっていて、驚くべき、新たな映像と物語のフォルムを巧みに生み出すことに成功しています。

 また2019年は、常に活躍を続けてきた偉大な監督たちの製作にも密接に関わってきました。アルノー・デプレシャン(『ルーベ、嘆きの光』)(WOWOWにて3月放映)、そしてアンドレ・テシネ(『見えない太陽』)、彼らの作品は現代社会に非常に明晰な眼差しを向け、それぞれに特有な演劇性やロマネスク的な嗜好を損なうことなく、ドキュメンタリー的な側面も持ち合わせています。

 それでは今回の目玉であるふたりの風変わり(エキセントリック)な映画作家を紹介しましょう。あるときゴダールは、フランス映画システムの中心を外れた自分の状況に触れ、「余白こそが紙面を成り立たせている」と主張しました。フランス映画には、抜け道を使うだけではなく、ときには大衆映画のコードと戯れ、狂気じみた(タッチ・オブ・マッドネス)スター俳優を共犯者として、フィルモグラフィーを築きあげてきた一匹狼的作家がほかにも何人かいます。ジャン=ピエール・モッキーとセルジュ・ボゾンは、二つの異なる時代において、まさにそうした作家を体言しています。

 今回、白紙委任状を受け、2019年8月8日に他界したジャン=ピエール・モッキーの追悼特集ぜひ提案したいと思います。若い時分に俳優としてキャリアをスタートしたモッキーは、1959年に長編処女作となる『今晩おひま?』を監督して以来、フランス映画の中でもっとも私たちを熱狂させる映画作家となりました。ヌーヴェルヴァーグの同時代人でありながら、モッキーは30年代の詩的レアリズムの伝統を引き継いでいます。モッキーの映画には、ユーモアとファンタジーがあるとともにメランコリー、暴力、そして悲劇も存在しています。そのフィルモグラフィーの黄金時代には、B級犯罪映画的であると共に、フランス映画の中でも優れた政治的映画を生み出しています。その一本が1970年に撮られた『ソロ』です。

 非常に独創的な作品を作り続けている1972年生まれのセルジュ・ボゾンは、今日、モッキーの後継者とよべる存在でしょう。ひそかに展開される不条理とも言えるユーモア、陰謀や謎への嗜好、無味乾燥にも思える作風、速度ある語り、そしてとりわけ「アート系」映画としてごたごたと媚びることの拒否、セルジュ・ボゾンの映画の魅力は、(映画史との)断絶しながらもその伝統を受け継ぎ、新たなものを創造しながら、過去の作品の引用もするという、相反する運動の間を自由に往来していることでしょう。

 批評家でもあった映画作家セルジュ・ボゾンは、フランス映画史への反旗の記憶を携えながら、無難な道を辿ることをせず進んできました。「フランス」、それはボゾンの映画の重要なテーマです。その歴史(まさにそれがタイトルにまでなっている『フランス』)、フランス共和国の制度や組織(『ティップ・トップ』の警察や『マダム・ハイド』の学校)、それらが頑強なまでに反自然主義的で、時に不協和音を奏でながらもミュージカル的に描かれてきました。ダンディーな映画作家セルジュ・ボゾンは演出への変わることのない信念に溢れ、勇敢に、映画の炎を燃やし続けています。

〈第2回 映画批評月間 ~フランス映画の現在をめぐって~〉
主催:アンスティチュ・フランセ日本
共催:シネ・ヌーヴォ、出町座、同志社大学今出川校地学生支援課、ヴュッター公園
助成:アンスティチュ・フランセパリ本部、ユニフランス
アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム オフィシャル・パートナー:CNC、笹川日仏財団、TV5 MONDE
フィルム提供及び協力:BAC Films, ビターズ・エンド、セルロイド・ドリームス、フィルム・ブティック、レ・フィルム・ペレアス、キノフィルムズ、モッキー・デリシャス・プロダクツ(MDP)、ピラミッド・フィルム、タマサ・ディストリビューション、トランスフォーマー、SBS、東北新社
特別協力: アルテ
字幕制作協力:Bart.lab、ヴュッター公園、佐宗千加

Mois de la critique – nouveaux rendez-vous du cinéma français
organisé par l’Institut français du Japon
coorganisé par Ciné Nouveau, Demachiza, Université Doshisha et Vutter Koen
avec le soutien de : Institut français, CNC, Fondation Sasakawa, TV5 MONDE
Merci à Arte, BAC Films, Bitters End, Celluloid Dreams, Film boutique, la Les Films Pelléas, Kino Films, Mocky Delicious Products, Pyramide Film, Tamasa Distribution, Transformer, SBS, Tohokushinsha Film.
Avec la collaboration spéciale : Arte
Avec l’aide de : Bart.lab, Vutter Koen.

本企画は以下の都市にも巡回します。
【東京】3/12(木)会場:ユーロ・ライブ
【東京】3/13(金)~4/19(日)会場:アンスティチュ・フランセ東京
【横浜】4/16(木)会場:キノシネマ|4/17(金)会場:シネマ・ジャック&ベティ
【大阪】3/7(土)〜3/13(金)会場:シネ・ヌーヴォ


【お問合せ 】
アンスティチュ・フランセ関西―大阪
大阪市北区天神橋2-2-11 阪急産業南森町ビル9階
Tel. 06-6358-7391
E-mail : kansai.osaka@institutfrancais.jp

アンスティチュ・フランセ関西―京都
京都市左京区吉田泉殿町8
Tel. 075-761-2105
E-mail : kansai@institutfrancais.jp

*Copyrights
© 2019 Bac Films Distribution All rights reserved, © Guy Ferrandis / SBS Productions, © 2008 REZO FILMS, © Curiosa Films ? Bellini Films ? Arte France Cinema, © 2019 ATELIER DE PRODUCTION ARTE FRANCE CINEMA NEXUS FACTORY & UMEDIA GARIDI FILMS, © Les Films Pelleas, © DR, © M. Films