___そこに、ただ、問いだけがある。
世界的な現代美術作家の杉本博司に、はじめて長期密着取材を行ったドキュメンタリー
京都における杉本博司初の個展開催を記念し、1週間限定上映。
イントロダクション
現代美術作家・杉本博司。2009年高松宮記念世界文化賞など国内外で数々の賞を受賞し、海外のオークションでは数千万円で落札されることもある、現代美術界を牽引する存在だ。杉本の出発点は写真家だった。写真は「今目の前にある現実を切り取るもの」だと思われているが、杉本は写真をコンセプチャルアートの手段として捉え、その可能性を無限に広げた。古美術商の経験から日本美術への造詣も深く、近年は伝統芸能の企画演出に加え、能舞台の設計など活動の幅を広げている。本作は、そんな杉本に初めて長期密着取材を行ったドキュメンタリー。2010年にWOWOW「ノンフィクションW『はじまりの記憶 現代美術作家・杉本博司』」として放送後、国際エミー賞のアート部門にノミネートされた力作が、新撮を加えた映画版として劇場に甦る。日本、NY、南仏、シドニーと国境を超えた創作の現場に密着し、作家の素顔と、その視線の先を見つめる。
プロフィール
杉本博司
杉本博司は1948年東京生まれ。1970年渡米、1974年よりニューヨーク在住。活動分野は、写真、彫刻、インスタレーション、演劇、建築、造園、執筆、料理と多岐に渡り、世界のアートシーンにおいて地位を確立してきた。杉本のアートは歴史と存在の一過性をテーマとし、そこには経験主義と形而上学の知見をもって、西洋と東洋との狭間に観念の橋渡しをしようとする意図があり、時間の性質、人間の知覚、意識の起源、といったテーマを探求している。世界的に高く評価されてきた作品は、メトロポリタン美術館(NY)やポンピドゥセンター(パリ)など世界有数の美術館に収蔵。代表作に『海景』、『劇場』、『建築』シリーズなど。
2008年に建築設計事務所「新素材研究所」を設立、IZU PHOTO MUSEUM(2009)、MOA美術館改装(2017)などを手掛ける。2009年に公益財団法人小田原文化財団を設立。2017年10月には構想から10年の歳月をかけ建設された文化施設「小田原文化財団 江之浦測候所」を小田原市江之浦にオープン。古美術、伝統芸能に対する造詣も深く、演出を手掛けた『杉本文楽 曽根崎心中付り観音廻り』公演は海外でも高い評価を受ける。2019年秋にはパリ・オペラ座にて演出を手掛けた『At the Hawk’s Well(鷹の井戸)』を上演。主な著書に『苔のむすまで』、『現な像』、『アートの起源』、『空間感』、『趣味と芸術-謎の割烹味占郷』。1988年毎日芸術賞、2001年ハッセルブラッド国際写真賞、2009年高松宮殿下記念世界文化賞(絵画部門)受賞。2010年秋の紫綬褒章受章。2013年フランス芸術文化勲章オフィシエ叙勲。2017年文化功労者。
中村佑子
1977年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒。哲学書房にて編集者を経て、テレビマンユニオン参加。美術や建築、哲学を題材としながら、現実世界のもう一枚深い皮層に潜るようなナラティブのドキュメンタリーを多く手がける。映画作品に『はじまりの記憶 杉本博司』、『あえかなる部屋 内藤礼と、光たち』(2017年HOTDOCS正式招待)、テレビ演出作にWOWOW「はじまりの記憶 現代美術作家 杉本博司」(2012年国際エミー賞・アート部門ファイナルノミニー)、NHK「幻の東京計画 首都にあり得た3つの夢」(2015年ギャラクシー奨励賞受賞)等がある。現在、文芸誌『すばる』にて連載していたエッセイ「私たちはここにいる 現代の母なる場所」が今秋書籍化。近年は「女性性」をテーマとしている。
◆展覧会INFOMATION◆
杉本博司 瑠璃の浄土
会期:2020年4月4日(土)~6月14日(日)
会場:京都市京セラ美術館 新館「東山キューブ」(京都)
https://kyotocity-kyocera.museum/exhibition/20200321-20200614
京都市美術館が京都市京セラ美術館としてリニューアルオープンするにあたり、開館記念展として『杉本博司 瑠璃の浄土』が開催されます。杉本の京都における初の大規模展となる本展では、「瑠璃」、「浄土」、「偏光色」をキーワードとして、写真を起点に宗教的、科学的、芸術的探求心が交差しつつ発展する杉本の創造活動について改めて考えるとともに、長きにわたり浄土を希求してきた日本人の心の在り様を見つめ直します。
2011年/日本/81分
配給:Playtime
出演:杉本博司、安藤忠雄、李兎煥、野村萬斎、浅田彰
監督:中村佑子
音楽:渋谷慶一郎
ナレーション:寺島しのぶ
プロデューサー:大出寛之、古谷秀樹、中村佑子