【イントロダクション】
台湾映画史に燦然と輝く珠玉作が、五年の沈黙を破り待望の日本公開決定!!
彼女は素敵な美術品に囲まれ暮らしていた。だけど、美術商の両親は出張がちで離婚も秒読み。優しかった彫刻家のお爺ちゃんも死に、遂に居場所がなくなった。そんな時、スケッチブックを抱え街を彷徨う不思議な転校生に出逢った。子供と大人の世界の真ん中、心に傷を負った二人は旅に出る。あの寂しくて眩しい星空を見るために――。
台湾の国民的人気絵本作家ジミー・リャオのベストセラー「星空」を、『九月に降る風』『百日告別』のトム・リン監督が映像化した本作は、2012年の大阪アジアン映画祭の特別招待作品として上映され大好評を博し、一般公開が熱望された。だが、それ以降日本の版権の所在が不明とされていた幻の作品。この度、遂に5年の沈黙を破って日本公開が決定した。
主演は『ミラクル7号』でのチャウ・シンチ―の息子役が話題になったシュー・チャオ、そして映画初出演のリン・フイミン。ベテラン俳優陣の名演に加え、アジアのスーパーバンドMaydayの石頭(STONE)ことシー・チンハン、さらにグイ・ルンメイが特別出演し脇を固める。撮影は『モンガに散る』『捜査官X』『GF*BF』のジェイク・ポロック、音楽は日本のworld’s end girlfriendが参加するなど台湾、アメリカ、中国、韓国、フランスからスタッフが一堂に集結した。本国では、アジアのスーパーバンドMaydayが提供した同名主題歌のヒットも大きな要因になり、1,778満台湾ドル(約7000万円)のヒットとなった。
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原作者から監督への熱烈オファー、そして台湾映画としての公開へ――。
本作は、2009年に絵本「星空」発売時、原作者自身が『九月に降る風』で才能を認めていたトム・リン監督へ映画化の相談を持ちかけたことから始まった。これまでジョニー・トー監督の『ターン・レフト、ターン・ライト』、ウォン・カーウァイのプロデュース作『地下鉄』など、ジミー作品は香港で映画化されてきたが、特に思い入れのある『星空』は、なんとしても台湾映画にしたいとこだわった。そして作品を気に入ったトム・リン監督は原子映象で制作を決定、脚本執筆に取りかかった。
プロデューサーのチェン・クァンティンは、自身も関わる中国の制作会社である華誼兄弟が、中国と台湾の有能な監督を支援し10本の映画を作る“プロジェクトH計劃”に本作を提案、中国と台湾の合作映画として制作が実現した。これにより低予算で制作予定だった本作は、従来の4倍の製作費を獲得した大作となり、特に力を入れることが可能になったファンタジー部分は、各映画賞で視覚効果部門の受賞やノミネートを果たした。
「『星空』は私が近年一番思いをこめた作品です。私はカフェで脚本を読み何度も涙を流し心に突き刺さりました。あなたの脚本は原作と同様に青春期の危うさと狂おしさを懐かしみ、誰もが経験する成長過程を見事に描いています。ありがとう」という手紙をジミーから送られたトム・リン監督は感激し、これが大きな励みとなり、たとえどんな困難に遭おうとも必ず多くの観客に新しい映画届けると心に決めたという。
青春の旅の過程では誰もが成長時期独特の苦しみと未熟さに悩みます。でも重要なのは、我々がどんなに不本意でも未知なる未来へ向けて歩み続けることです。
『星空』は『九月に降る風』に続いて成長をテーマにした映画です。違うのは、今回は女の子の成長にフォーカスしたことで、私にとっても挑戦です。
この少女は家庭の問題、初恋、学校など青春の難題の中で成長していき、これが感動の由縁です。
私はこの青春ラブストーリー『星空』が、同じような境遇にある青少年達がそれと向き合えることのきっかけになることを祈っています。
――― トム・リン(本作監督)
【ストーリー】
小美(シャオメイ)は孤独な13才の少女、街は怪獣のようで彼女にとっては冷たく、感じるのは疎外感ばかり。家もそうだ。両親との間にも大きな溝がある。父と母の関係は行き詰まり、彼女は幻想の中に逃げ込むしかなかった。
彼女に寄り添うのは、街では青い象だったり、路地で出現する火を噴くドラゴンだ。小美は小さいときに山の中で自然に囲まれたお爺さんと過ごした日々を懐かしく思った。真っ暗な夜、湖面から見た輝くばかりの星空を。お爺さんはよく小美に言った。「寂しくなったら、星空を見上げるのだよ。世界はこんなにも大きい…」
ある日、小美は小傑(シャオジエ)に出会う。彼は問題を抱えた転校生だった。ふたりは説明のできない吸引力で引き寄せられ、夕陽の下で折り紙の動物たちと一緒に散歩をしたり、小傑が同級生からいじめにあっている時は、小美が火を噴くドラゴンになって彼を救った。現実の生活の中での難題は減らなかったけれど、ふたりは一緒にいることで世界を共有できた。
小美の両親はついに離婚という言葉を出し、ジグソーパズルのピースが崩れ落ちるように彼女の心が砕けた。勇気をふるい、小美は小傑と共に街を出ることにした。ふたりが向かったのは、小美がかつてやさしいお爺さんと過ごした山小屋。もう一度あの静かで純然とした星空を見るために…。
ふたりは森林鉄道の列車に乗り、深い山奥へ入っていった。小美は列車の行く手にゴッホの描いた星月夜の絵が見えた。二人は森の中で迷子になったが、西瓜を運ぶトラックの荷台に乗せてもらい、雨が降ってきたので小さな教会で雨宿り。そして、山の中の湖で一緒に美しい星空を見た。
ようやくお爺さんの山小屋にたどり着いた時、小美は突然高熱に見舞われた。
小美が目ざめたとき、世界は全く変わっていなかった。ベッドのそばには心配そうな両親の顔。小傑は?彼の姿はどこにもなかった。小傑はもともといなかったかのように、小美の生活から消えてしまった。
でも小美は永遠に忘れない。あの夏、最も輝いていた、そして最も寂しい星空を…。
監督:トム・リン(林書宇)
1976生まれ。映画監督。世新大学で映画を学んだ後にカリフォルニア芸術大学院に留学。やの助監督をつとめながら短編映画を製作、2005年の短編映画『海岸巡視兵(原題:海巡尖兵)』で国内の映画賞を数々受賞した。2008年初の長編映画『九月に降る風(原題:九降風)』は台北電影賞の審査員特別賞、金馬賞ではオリジナル脚本賞を受賞、日本でも東京国際映画祭で上映された後に一般公開。2011年には台湾の人気絵本作家ジミーの『星空』を映画化し、高い評価を受けた。2016年の『百日告別』は自身の喪失と再生の経験をもとに脚本を書いたももので、2015年の台北電影節のクロージング作品として上映され、金馬奨ではオリジナル脚本賞にノミネートされた。
原作:ジミー・リャオ(幾米)
1958年、台湾宜蘭生まれ。絵本作家。1998年に白血病を患ったことをきっかけに、絵本の創作を始める。1999年に刊行された『君のいる場所』が大ベストセラーとなり、台湾で大人の絵本ブームを巻き起こし、これまでに50を超える作品を発表。15ヶ国以上で翻訳出版されている。
邦訳に『星空』『幸せのきっぷ Kiss& Goodbye』『君といたとき、いないとき』『地下鉄』など。香港での映画化作品は『ターン・レフト、ターン・ライト(原題:向左走.向右走)』、『地下鉄(原題:地下鐵)』『恋の風景(原題:戀之風景)』。『ターン・レフト~』と『地下鉄』は共にテレビドラマ化され、音楽劇として香港と台湾で何度も舞台化されている。台湾での最新刊は『忽遠忽近』(2016年)。
シュウ・チャオ(徐嬌) 【シエ・シンメイ(謝欣美)役】
1997年中国生まれ。2003年に「七色花藝術團」に合格して演技者としてキャリアスタート。2007年、監督の『ミラクル7号(原題:長江七号)』のオーディションで男の子役に抜擢され、その演技力と存在感が話題を呼び、第28回香港電影金像賞で新人賞を獲得。ほか出演作に『花木蘭』(2009年)、『未來警察』、『イップ・マン 誕生(原題:葉問前傳)』(2010年)、『大武當之天地密碼』(2012年)、『聽見下雨的聲音』(2013年/台湾)、『通靈之六世古宅』(2015年)、『畢業旅行』(待機中)など。
リン・フイミン(林暉閔) 【チョウ・ユージエ(周宇傑)役】
1997年生まれ。13才の時に本作の周宇傑の役のオーディションで1万人の中から選ばれ、第14回台北電影賞の新人賞を受賞した。小さい頃から8年間習っていたテコンドーでは黒帯保有者。その後、映画『看不見的光影』(2012年)、『逗陣ㄟ』(2013年)、ドラマ『今天我代課』(2015年)に出演。現在は台北芸術大学の映画製作学科の学生。Maydayなどが所属する相信音樂がマネジメントしている。
レネ・リウ(劉若英) 【シンメイ(欣美)の母役】
1969年生まれ。シンガーソングライター、女優。1994年にスクリーンデビュー、同年2作目の『少女小漁』でアジアパシフィック映画祭の主演女優賞を受賞。1998年の『徵婚啟事』で金馬賞審査員特別賞ほか数々の賞に輝く。主な出演作は『夜に逃れて』(2000年)、『ダブルビジョン』(2002年)、『20 30 40の恋』(2004年)、『天下無賊』(2005年/中国)、『生日快樂』(2007年/香港)、『一個好爸爸』(2008年/香港)など。音楽活動でもコンスタントにアルバムのリリースやコンサートも行い、最新のワールドツアーでは3月に東京公演も実施した。
ハーレム・ユー(庾澄慶) 【シンメイ(欣美)の父役】
1961年生まれ。歌手、音楽家、司会者。1986年に歌手デビュー、作詞・作曲・編曲・プロデュース、数々の楽器もこなす台湾ポッブス史の重要な位置を占めるマルチアーチスト。アジア中に旋風を起こした台湾アイドルドラマ「花より男子〜流星花園」の主題歌に「心ならずも」が使われ、日本での知名度も高い。司会者としても一流で、音楽と司会業では数々の受賞歴を持つ。俳優としての活動は少ないが、1985年の映画『細雨春風』から本作まで5本に出演している。
ケネス・ツァン(曾江) 【シンメイ(欣美)の祖父役】
1934年生まれ。香港の俳優。1960年代から70年代にかけて香港でおびただしい数の映画に出演した実力派俳優。1980年以降数は減るものの、テレビドラマと平行して年に数本は出演している。2015年『竊聽風雲3』で香港電影金像賞の助演男優賞を受賞。
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ジャネル・ツァイ(蔡淑臻) 【チョウ・ユージエ(周宇傑)の母役】
1975年生まれ。モデル、女優。女優として2003年にドラマデビュー、アイドルドラマに多く出演しているため日本でも知名度は高い。2010年に社会現象を起こしたドラマ「結婚て、幸せですか?(原題:犀利人妻)」と2015年の「CSIC TAIPEI科学捜査班(原題:CSIC 鑑識英雄)」ではドラマアワードの金鐘賞で助演女優賞にノミネートされた。映画は2005年から本作をふくめ存在感のある助演を務めてきたが、2016年の『奉子不成婚』で初主役。
シー・チンハン(石錦航=Maydayのストーン) 【教師役】
1975年生まれ。音楽家、俳優、作家。1997年に結成した台湾のバンドMaydayのギタリストで音楽創作や演技、文筆業でも高い評価を受けている。Maydayとして全員出演した映画『五月の恋(原題:五月之戀)』では、主役チェン・ボーリン(陳柏霖)の兄役としてメンバーの中でひとりだけウェイトの高い役を演じ俳優の片鱗を見せた。2011年本作に続いて『明天記得愛上我』でコメディに挑戦、張震(チャン・チェン)が監督した短編『三生(尺蠖)』では中年オタク役で演技の幅を広げた。2014年初エッセイ「末日備忘錄」を出版し文才も披露。たいへんな読書家でもある。
グイ・ルンメイ(桂綸鎂) 【成長したシンメイ(欣美)役…友情出演】
1977年生まれ。女優。2002年に映画『藍色夏恋(原題:藍色大門)』で易智言(イー・ツーイエン)監督に西門町でスカウトされて主演デビュー。『時の流れの中で(原題:經過)』(2004年)、『(言えない秘密原題:不能說的秘密)』(2007年)、『台北カフェストーリー(原題:第36個故事)』(2010年)の台湾映画のほか中国や香港映画にも多数出演。『GF*BF(原題:女朋友。男朋友)』(2012年)で金馬賞の主演女優賞を受賞、『德布西森林』(2016年)など台湾映画を代表する女優に成長。
日本版字幕:島根磯美 協力:江口洋子 統括:柳川由加里
提供:台北駐日経済文化代表処、台湾新聞社
提供:ポリゴンマジック 配給・宣伝:太秦
2011年/台湾・中国/中国語/99分/原題::星空(英題:Starry Starry Night)
原作:ジミー・リャオ(幾米)「星空」(トゥーヴァージンズ刊)
監督・脚本:トム・リン(林書宇)
撮影:ジェイク・ポロック(Jake Pollock)
音楽:world’s end girlfriend
出演:シュー・チャオ(徐嬌)、リン・フイミン(林暉閔)、レネ・リウ(劉若英)、ハーレム・ユー(庾澄慶)、ケネス・ツァン(曾江)、ジャネル・ツァイ(蔡淑臻)、シー・チンハン(石錦航) 特別出演:グイ・ルンメイ(桂綸鎂)