1955年度ベルリン国際映画祭長編映画賞受賞
映画『ひろしま』は、誰もが知っている『ゴジラ』(1954年)の前年に製作・公開された。ともに伊福部昭が音楽を担当し、同じ旋律が流れる2作でもある(伊福部は『ひろしま』で作曲した劇伴を『ゴジラ』にも転用している)。原爆の日をいかに再現するかに腐心して製作された『ひろしま』が市民の下支えで作られ、あの日の太田川を行進する人々の凄惨な光景を表象した後に、核の怨念を形象化した世界のキング・オブ・モンスター『ゴジラ』へ転生したとみるのはあまりに思考が無邪気すぎるだろうか。だが半世紀を経た今、この2作の日本および世界での認知、受容は大きすぎるほどに開いている。『ひろしま』は人類が核爆弾を持ち得てしまったことと相反する意味で、映画を持ち得たということの証左として存在している。本作の製作に携わった数万人の広島市民とスタッフ・キャストを含む製作者たちの「人類の世において、二度とこのようなことがあってはならない。」という願いは、映画というメディアで半世紀後の今を生きる私たちにも変わらず差し出されている。本作をよりユニバーサルな形で多くの観客と共有する機会を持つことに躊躇などあるはずがない。そのように考え、ささやかな場ではありますが、上映をさせていただく所存です。京都に住む在住外国人の皆さまを含む市民の皆さまと、『ひろしま』を共有したいと思っています。
出町座 田中誠一
1953年/日本/104分/モノクロ/スタンダード
配給:奇跡への情熱(核廃絶プロジェクト)
監督:関川秀雄
原作:長田 新(「原爆の子〜広島の少年少女のうったえ」岩波書店)
脚本:八木保太郎
助監督:熊井 啓
音楽:伊福部 昭
出演:月丘夢路、岡田英次、加藤嘉、山田五十鈴