彼女はアイスランドから世界を救う—。
とぼけたユーモアと人生の苦味、音楽と自然に彩られた、強さと優しさの物語
▲予告編のナレーションは島本須美さん(ナウシカ)!抜群です!
【イントロダクション】
処女長編作『馬々と人間たち』で鮮烈なデビューを飾り、世界中で20以上もの映画賞を獲得。アキ・カウリスマキやロイ・アンダーソンの後に続く、北欧の才能と目されるベネディクト・エルリングソン監督の最新作『たちあがる女』はコーラス講師と環境活動家、二つの顔を持つ女性ハットラが、新しい家族を迎え入れ、母親になる決意をしたことから巻き起こる騒動をユーモラスに描くヒューマンドラマだ。
雄大なアイスランドの自然と叙情的な音楽に彩られた現代のおとぎ話ともいえる物語は、とぼけた味わいとコミカルな笑いを醸しながらも、いまの人間社会において見逃してはいけない問題を皮肉たっぷりに浮かび上がらせていく。
本作は、本年度のカンヌ国際映画祭・批評家週間の優秀な脚本に贈られる SACD 賞受賞を皮切りに、劇中で一人二役を演じた、主演女優ハルドラ・ゲイルハルズドッティルが二つの映画祭で最優秀女優賞を受賞したほか、2019 年アカデミー賞アイスランド代表作品に選出されるなど、現在も多くの映画祭を席巻中!
特に批評家たちから絶賛されているのが、主人公ハットラのキャラクター性だ。彼女は自然と音楽を愛し、幸せを手に入れるために行動することを躊躇しない強く自由な女性であり、男女平等度で十年連続一位を保っているアイスランドの土壌が反映されたような人物像なのだ。
さらに、元々舞台演出家であったエルリングソン監督は、本来スクリーンに姿を現すことのない劇伴奏者たち——ブラスバンドとウクライナの合唱隊を画面に登場させてしまうユニークな手法でハットラの心情を表現し、本作を唯一のものにしている。
また先日、本作は二度のオスカーに輝くジョディ・フォスター監督・主演でハリウッドリメイクされることが決定した。本作に強く魅了されたフォスターは、「この映画は私に言葉では言い表せない興奮を与えてくれました。ハットラを演じるのが待ちきれません。私はユーモアと情緒を大胆に、そして奇抜に融合させたこの作品に引き込まれ続けています。これは私達の時代を代弁する作品なのです」と語った。「自分らしく生きる一人の女性」を通して、人間の強さと優しさ、そして寛容を謳い上げ、生きていく中で一番大切なものを気付かせてくれる『たちあがる女』は、爽やかな感動を呼ぶアイスランド発・痛快ヒューマン・エンターテイメントなのだ。
【監督のことば】
この映画は、我々の世界に差し迫っている脅威をテーマにした英雄物語です。
ヒーローを描いた冒険物語であり、シリアスな内容を笑顔で語るおとぎ話なのです。
主人公は、手つかずの野性を守る保護者で、アルテミスのような存在です。彼女は一人でこの惑星の急速な変化に直面し、母なる地球と未来の世代を救う役割を担っています。私たち観客は彼女に近い視点でこの映画を観ます。 それが彼女の人生にアクセスする方法だからです。 アストリッド・リンドグレーンによる「はるかな国の兄弟」という小説に、兄弟のこんな会話があります。
ジョナサンは言った。たとえ難しくても危険でも、おまえにはやらなければならないことがある、と。
「それはなぜ?」驚いて僕は聞いた。
「そうでなければ、おまえは本当の人間ではない。ただのクソガキだ」
本作『たちあがる女』は、「本当の人間」になろうと奮闘する一人の女性についての映画なのです。
—————ベネディクト・エルリングソン
【ものがたり】
風光明媚なアイスランドの田舎町に住むハットラは、セミプロ合唱団の講師。彼女は周囲に知られざる、もう一つの顔を持っていた。謎の環境活動家〝山女〟として、密かに地元のアルミニウム工場に対して孤独な闘いを繰り広げていたのだ。そんなある日、彼女の元に予期せぬ知らせが届く。長年の願いだった養子を迎える申請がついに受け入れられたのだ。母親になるという夢の実現のため、ハットラはアルミニウム工場との決着をつけるべく、最終決戦の準備に取り掛かる——。
『たちあがる女』2018年/アイスランド・フランス・ウクライナ合作/アイスランド語/101分
英題:Woman at war/日本語字幕:岩辺いずみ/後援:駐日アイスランド大使館
監督・脚本:ベネディクト・エルリングソン(『馬々と人間たち』)
出演:ハルドラ・ゲイルハルズドッティル、ヨハン・シグルズアルソン、ヨルンドゥル・ラグナルソン、マルガリータ・ヒルスカ