巨匠アミール・ナデリが切望したイタリアでのオールロケを敢行
敬愛する“黒澤明”の精神で描く孤高の傑作
【INTRODUCTION】
監督は、天涯孤独の少年を圧倒的な映像美で描いたイラン映画の金字塔『駆ける少年』(85)、西島 秀俊主演『CUT』(11)も記憶に新しい現代イラン映画の巨匠アミール・ナデリ。長年、イタリア で映画を撮ることを夢見ていたナデリが、遂にイタリアでのオールロケを敢行。ミケランジェロ やアントニオの彫刻に影響を受けたと語るナデリは、孤立無援のなか肉体を過剰に酷使する男の 限界突破を美しく描き出した。 また、敬愛する黒澤明作品のようなダイナミックなカメラワークと音響で表現された山々と人物 の喜怒哀楽は、見る者の心を大きく揺さぶる。それはまるで風土や歴史、芸術に捧げられる、黒 澤明の精神で作られたイタリア彫刻作品のようだ。第 73 回ヴェネツィア国際映画祭「監督・ばん ざい!賞」を受賞。本年度の東京フィルメックスでも回顧上映が特集されるなど、今まさに各国 で注目を集めるアミール・ナデリが作り上げた孤高の傑作である。
【DIRECTOR】
監督・脚本・編集・音響:アミール・ナデリ Amir Naderi
1945年、イランのアバダンに生まれる。スチール・カメラマンとして活動した後、脱獄犯を主人公とする犯罪映画「さらば、友よ(Good By Friend)」(71)で映 画監督デビュー。続いて殺人を犯して逃亡する男を街頭ロケを多用して描いた第2作「タンナ(Tangna)」(73)を監督。70年代イラン映画のスター、ヴェヘルー ズ・ヴォスーギを主演に迎え、財産も名誉も奪われた男の壮絶な復讐を描いた「タングスィール(Tangsir)」(73)は批評家から高く評価されると同時に興行的にも成功をおさめた。その後、アッバス・キアロスタミらとともに児童の情操教育のために設立された児童青少年知育協会(カヌーン)をベースに活動。ハーモニカの所有をめぐる子供たちの争いを描いた『ハーモニカ』(74)、台詞を一切排した映像詩的な中編『期待』(74)など、独自のスタイルをもった児童映画を監督する。『駆け る少年』(84)、『水、風、砂』(89)は、2作連続でフランスのナント三大陸映画祭で最優秀作品賞を受賞。イラン映画が海外で評価されるきっかけを作った。その後、アメリカに移住し、ニューヨークをベースに活動。『マンハッタン・バイ・ナンバーズ』(89)はヴェネチア映画祭、「A,B,C,マンハッタン(A,B.C….Manhattan)」(97)はカンヌ映画祭「ある視点」部門で、『ベガス』(08)はヴェネチア映画祭コンペティションで上映された。2011年は、西島秀俊を主演に迎え、日本で撮影した『CUT』を監督。続く『山 〈モンテ〉』(16)は全編をイタリアで撮影した。最新作はロサンゼルスで撮影され、ヴェネチア映画祭で上映された『マジック・ランタン』(18)。
2016年/107分/伊・米・仏/イタリア語/シネマスコープ/5.1ch
英題:MOUNTAIN 原題:MONTE
監督・脚本・編集・音響:アミール・ナデリ
製作:カルロ・ヒンターマン、ジェラルド・パニチ、リノ・シアレッタ、エリック・ニアリ
撮影:ロベルト・チマッティ 美術:ダニエレ・フラベッティ
衣装:モニカ・トラッポリーニ 装飾:ララ・シキック 録音:ジャンフランコ・トルトラ
VFX:佐藤文郎 配給:ニコニコフィルム 宣伝:岩井秀世 デザイン:山口拓三
出演:アンドレア・サルトレッティ、クラウディア・ポテンツァ、ザッカーリア・ザンゲッリーニ、セバスティアン・エイサス、 アンナ・ボナイウート