1986年に発表された『恐怖分子』はエドワード・ヤン長編第3作にして台湾ニューシネマの到達点のひとつである。台北という大都市を舞台に、偶然に交錯する複数の人物たちの運命を、鋭利な構成と冷徹な視線で描き出した本作は、現代都市に生きる人間の孤独と不安を、サスペンスの形式を借りて極限まで研ぎ澄ませた傑作として高く評価されてきた。
『恐怖分子』の恐ろしさは暴力そのものよりも誰かの何気ない行為が別の誰かの人生を思いがけず傷つけてしまう都市の構造にある。現実と虚構、観察する者とされる者、書くことと生きることの境界はゆらぎ、観客は次第にこの都市全体が見えない緊張の網の目でできていることに気づかされる。つながりながら孤立する現代社会を生きる私たちにとって、本作はますます切実な同時代映画として迫ってくる。都会に暮らす人々の不条理や孤独を浮き彫りにした群像劇の傑作である。
『恐怖分子』terrorizers
1986/HongKong, Taiwan/109min
出演:コラ・ミャオ、リー・リーチュン、チン・シーチェ、クー・パオミン
監督・共同脚本:エドワード・ヤン
共同脚本:シャオ・イエー
編集:リャオ・チンソン
録音:ドゥ・ドゥーチー
主題曲演唱:ツァイ・チン