『ラッカは静かに虐殺されている』『ラジオ・コバニ』を観たら、この作品は必見。
2作では描かれない“シリアの悲劇”の奥行きを高い芸術性を持った表現で描く重要作。
いま、ここに緊急公開!
2017年山形国際ドキュメンタリー映画祭最優秀賞(山形市長賞)
2017年スウェーデン・マルメ・アラブ・ドキュメンタリー祭最高監督賞
2017年ヨルダン・カラーマ人権映画祭ベスト・ドキュメンタリー賞
シリアの悲劇は、2011年に始まったわけではない。1980年代にアサド体制に反対した多くの若者が当局に追われ、国を去らざるを得なかった。監督の個人的な物語が、他の4人の語り手の物語と重なり合う。くすんだ軍服に象徴される沈黙や恐怖、戦慄の記憶。赤い風船に託されたと自由と抵抗。白色の雪によっても覆えない心の傷。何故シリア社会が爆発し、革命が始まったのか、その背景に迫る。過去を語りながら、未来を見すえるシリア人の物語。
“ドキュメントとフィクションのシーンを意図的に混然一体にすることで、戦争や独裁を告発する真摯なドキュメントでありながら、同時に映画芸術としての地平も切り開いた、独創的な映像表現”
―榛葉健(ドキュメンタリー監督)
“誰が今戦争を繰り広げているのかではなく、誰が国の分断を促し、悲劇への道筋を用意したのかについて語る作品”
―アッシャルク・アルアウサト紙
“シリア難民の声を広げる作品”
―NHK World
“シリア内戦に関する類い希なる叙情的記録”
―P.O.V. magazine
“亡命を余儀なくされた5人の夢と記憶、恐怖を織り交ぜた追憶のエッセイ”
―Amanda Lee, Toronto.com
【監督紹介】
アルフォーズ・タンジュール
シリア人ドキュメンタリー映画監督。1975年生まれ。2000年~2004年、モルドバの芸術アカデミーで映画演出を学ぶ。帰国後、シリア映画総局の監督となり、『小さな太陽』(2008)で2008年カルタゴ映画祭銅賞と2009年ベルギー・モンス映画祭審査員特別賞を受賞。2009年以後、アルジャジーラ・ドキュメンタリー・チャンネルにて記録映画を多数制作。『木製のライフル』(2011/2012)は2013年アルジャジーラ国際ドキュメンタリー映画祭で公的自由・人権賞、2014年中国国際金熊猫ドキュメンタリー祭で最優秀プロダクション金熊猫賞を受賞。2016年、最新作『カーキ色の記憶』も各国映画祭で高い評価を得る。
【主な登場人物】
イブラヒーム・サミュエル
シリアの短編小説家。1951年、ダマスカス生まれ。大学入学後、アサド政権を批判する青年運動組織に加わったために逮捕され、77~80年に収監を余儀なくされる。88年に最初の短編小説集『重い足取りの匂い』を出版後、2002年までに4つの作品集を発表。湾岸系メディアでもコラム執筆。現在ヨルダンのアンマン在住。
ハーリド・ハーニー
シリア中部のハマ出身。画家。1982年のハマ大虐殺事件でアサド政権の兵士が彼の父親の目をくりぬいた時の情景が、未だに眼に焼き付いている。彼曰く、「カーキ色は当時我々が浴びた汚れを覆い隠すための色。この汚れを洗い落とすためには大量の白色が必要だ」とのこと。現在、フランスの田舎に在住。
アマーセル・ヤーギー
タンジュール監督の母方の叔母。通訳者。アサド政権を批判する反体制派政党に加わったため、10年にわたってダマスカス市内で隠れて偽名での生活を余儀なくされる。監督が幼少時、彼女の家をこっそり訪れたものの、本当の名前を知らなかったという。現在フィンランド在住。
シャーディー・アブー・ファハル
若手のシリア人映画監督、人権活動家。2011年のシリア革命勃発以来、平和的なデモに参加し、当局に3回拘束された。フランスに亡命した後も、シリアに潜入し撮影を続けた。依然として「歴史は後ろには戻らない」として独裁や全体主義と戦う決意を新たにしている。
『カーキ色の記憶』 2016年/カタール/アラビア語/108分/原題:A Memory in Khaki
監督:アルフォーズ・タンジュール
日本語字幕:額賀深雪、岡崎弘樹
配給:アップリンク
配給協力:『カーキ色の記憶』日本上映委員会