~『ストローブ=ユイレ シネマの絶対に向けて』(森話社)刊行記念~
Rétrospective Straub-Huillet in Kyoto
文学・演劇・思想など、広範なモチーフを作品に取り入れながら、特異な演出法において極北の存在である映画作家ジャン=マリー・ストローブとダニエル・ユイレ。東京・神戸にて開催されてきたレトロスペクティヴを京都2会場(出町座、同志社大学寒梅館)にて開催。最新作の上映やゲストによるレクチャーを通して、映画史上稀に見る妥協なき映画作家たちの片鱗に触れてみたい。
【スケジュール】 連日17:10~
5/5(土)【A】『湖の人々』『アルジェリア戦争』『水槽と国民』『レナートに』(58分)
5/6(日)【B】『土、習慣、植物』『共産主義者たち』(81分)+エルク・マーフーファー、ミハイル・リロフ監督によるQ&A(40分)
5/7(月)【C】『アメリカ(階級関係)』(126分)+渋谷哲也氏(東京国際大学教授・ドイツ映画研究)アフタートーク(60分)
5/8(火)【D】『おお至高の光』『ある相続人』『慰めようのない者』『影たちの対話』(83分)
5/9(水)【A】『湖の人々』『アルジェリア戦争』『水槽と国民』『レナートに』(58分)
5/10(木)【C】『アメリカ(階級関係)』(126分)
5/11(金)【D】『おお至高の光』『ある相続人』『慰めようのない者』『影たちの対話』(83分)
【上映作品】
『湖の人々』 Gens du lac
*関西初上映
2017年/17分/デジタル
監督:ジャン=マリー・ストローブ
ジャン=マリー・ストローブ85歳の誕生日にローザンヌで世界初上映された最新作。スイス出身の小説家ジャニーヌ・マサール著『湖の人びと』が主人公によって朗読されつつ、湖畔の風景が映し出されていく。
『アルジェリア戦争!』 La guerre d’Algérie!
2014年/2分/デジタル
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
精神分析医ジャン・サンドレットのテクストに基づく、室内のワンショットで撮られたシネトラクト。あるフランス人の男がもう一人の男を銃で脅しながら、かつてアルジェリア戦争で殺人を命じる上官を殺して逃げた過去を語る。出演者は本作の撮影監督クリストフ・クラヴェールと録音技師ディミトリ・オレ。
『水槽と国民』 L’aquarium et la nation
2015年/31分/デジタル
監督:ジャン=マリー・ストローブ
パリの東洋料理店の金魚の水槽の映像に続き、精神分析家エメ・アグネルがマルローの小説「アルテンブルクのクルミの木」第二部の一節を読み上げ、最後にルノワールの映画『ラ・マルセイエーズ』の抜粋が引用される。
『レナートに』 Pour Renato
2015年/8分/デジタル
監督:ジャン=マリー・ストローブ
編集:クリストフ・クラヴェール
2015年4月1日、スイスのシュタートキノ・バーゼルで撮影監督レナート・ベルタの70歳の誕生日を祝うために作られた。ベルタがウーゴ・ピッコーネと共同で撮影監督を手がけた『オトン』の抜粋と撮影現場の写真で構成。
『共産主義者たち』 Kommunisten
2014年/70分/デジタル
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:クリストフ・クラヴェール
2014年スイスのロールでCannon5Dで撮り下ろした、マルローの同名小説(1935)に基づく「侮蔑の時代」に、ストローブ=ユイレの旧作5本『労働者たち、農民たち』『フォルティーニ/シナイの犬たち』『早すぎる、遅すぎる』『エンペドクレスの死』『黒い罪』からの抜粋を加えた6部構成の作品。
『アメリカ(階級関係)』 Klassenverhältnisse
1983-84年/126分/デジタル上映
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:ウィリアム・ルプシャンスキ
カフカの未完の長編小説「失踪者」(旧題「アメリカ」)の映画化。故郷を追われ、船で単身アメリカにやってきたドイツ人青年カール・ロスマンが様々な階級関係の中で挫折と抵抗を繰り返す。主要場面はハンブルクとブレーメンで撮影された
『おお至高の光』 O somma luce
2009年/18分/デジタル
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
ダンテ「神曲」天国篇・最終第33歌、第67節「おお至高の光」から最後までを、ジョルジョ・パッセローネが朗読する。冒頭の黒味にシェルヒェン指揮、エドガー・ヴァレーズ「砂漠」初演ライブ演奏(1954)が流れる。
『ある相続人』 Un Héritier
2011年/22分/デジタル
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ、クリストフ・クラヴェール
バレスの「東方の砦」三部作の第一作「ドイツに仕えて」の抜粋に基づき、アルザス守護聖人の修道院がある聖オディル山でデジタル撮影。ストローブ自らロレーヌ人に扮し、ジョゼフ・ロトネール扮するアルザス青年と対話する。
『慰めようのない者』 L’inconsolable
2011年/15分/デジタル
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ、クリストフ・クラヴェール
「レウコとの対話」の一篇の映画化。吟遊詩人オルペウスを八つ裂きにする運命にあるバッケー(酩酊する狂暴なトラーキアの女)の一人にジョヴァンナ・ダッディ、最愛の妻エウリュディケーを亡くしたオルペウスにアンドレーア・バッチ。
『影たちの対話』 Dialogue d’ombres
2014年/28分/デジタル
監督:ジャン=マリー・ストローブ
撮影:レナート・ベルタ
ストローブ=ユイレが1954年に映画化を構想したという、ベルナノスの1928年の同名小説に基づく。一組の男女あるいは彼らの影が木陰で対話する。パリで稽古された後、ノルマンディのフレール近郊で撮影された。フランソワーズ役はコルネリア・ガイサー、ジャック役はベルトラン・ブルデールが演じる。
【関連作上映】
『土、習慣、植物』 Soils-Habit-Plants
2017年/日本・ドイツ/11分/オリジナル16mm/DCP上映
監督:エルク・マーフーファー、ミハイル・リロフ
2013年ストローブへのインタビューをきっかけに交友を結んだ両監督による短編ドキュメンタリー。3種の植物がその環境(土、水、空気)とどのように関わって来た/いくのかを丹念に描き出す。2017年ベルリンで開催されたストローブ=ユイレ展にて初上映。
【同志社大学会場プログラム】
【タイムテーブル】
5/8(火)
15:30 開場
16:00『労働者たち、農民たち』
18:30『放蕩息子の帰還/辱められた人々』
*『放蕩息子の帰還』上映後、渋谷哲也氏によるレクチャーあり
【料金】
*各回入替制
一般1500円、シニア1100円、学生1000円、会員(Hardience、出町座)1000円
*同志社大学学生・教職員(同志社内諸学校含む)無料
*レクチャーは半券をお持ちの方入場可(出町座での同プログラム半券含む)
【上映作品】
『労働者たち、農民たち』 Ouvriers, paysans(Operai, contadini)
2000年/イタリア・フランス/123分/35mm版
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
ヴィットリーニの未完の長編小説「メッシーナの女たち」の交響的な複数の独白からなる章を映画化。イタリアで終戦直後の混乱の中、行き場を失った労働者、農民たちがある山中で共同体を作り、苦難を乗り越え、ひと冬を越した物語が、夏の涸れ谷で語られる。
『放蕩息子の帰還/辱められた人々』 Il ritorno del figlio prodigo/Umiliati
2003年/イタリア・フランス/64分/35mm版
監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
撮影:レナート・ベルタ
『労働者たち、農民たち』の挿話を再利用した『放蕩息子の帰還』と、その後日譚『辱められた人々』の二部構成。後者では、山中の共同体に地主代行や元パルチザンらが訪れ、土地所有権を侵害する違法性、自給自足経済の割りの悪さを説き、共同体を崩壊させる。
【会場】
同志社大学寒梅館ハーディーホール
住所:京都市上京区御所八幡町103 同志社大学寒梅館
【アクセス】
市営地下鉄烏丸線「今出川」駅下車 2番出口より北へ徒歩約2分
*駐車場・駐輪場はありません。公共交通機関をご利用ください。
【お問合せ】
同志社大学今出川校地学生支援課
Tel:075-251-3270(平日9:00~11:30/12:30~17:00、土・日・祝閉室)
E-mail:ji-gakse@mail.doshisha.ac.jp
http://d-live.info/
主催:出町座、同志社大学今出川校地学生支援課
協力:神戸映画資料館、アテネ・フランセ文化センター、バルバラ・ウルリッヒ