スワンソング――。白鳥の歌。
白鳥がこの世を去る際に、最も美しい声で歌うとされる伝説から生まれた、この言葉。芸術や匠の技に身を捧げた者たちが、人生の最後に残した作品、最後のパフォーマンス、つまり有終の美が「スワンソング」と表現される――。
誰もが向き合う人生最後の決断を胸に、白鳥は飛び立てるのか?勇気や愛に後押しされ、人は人生を歩み続ける――。
ヘアメイクドレッサーとして活躍してきたパトリック・ピッツェンバーガー、通称“ミスター・パット”にとっての「スワンソング」は、はたしてわだかまりを残したまま亡くなってしまった親友であり顧客のリタを、天国へと送り届ける仕事になるのか?
ヘアメイクの現役生活を遠の昔に退き、老人ホームでひっそりと暮らすパットは、思わぬ依頼を受ける。かつての顧客で、街で一番の金持ちであるリタが、遺言で「パットに死化粧を」とお願いしていたのだ。リタの葬儀を前に、パットの心は揺れる。すっかり忘れていた生涯の仕事への情熱、友人でもあるリタへの複雑な思い、そして自身の過去と現在……。
ゲイとして生き、恋人との生活も送ったパットだが、最愛のパートナー、デビッドを早くにエイズで失っていた。リタの遺言によって、パットにはさまざまな思い出が去来していく。人生の最後に、人は何を残すことができるのか? そんな疑問に突き動かされるように、老人ホームを抜け出したパットが、多くの人と出会い、過去の自分と向き合うことで、決意を固めていく。それは、ささやかな決意かもしれない。しかし、いつか誰もが向き合うことになる、人生最後の決断でもある。
何かと話題になる「終活」というトピックを描くのはもちろんのこと、多くの人が人生で迷いを感じた時に背中を押してくれる、そんな勇気を与える感動作、それが『スワンソング』である。
2021年/USA/105分
原題:Swan Song
配給:カルチュア ・ パブリッシャーズ
出演:ウド・キアー
ジェニファー・クーリッジ、アイラ・ホーキンス、ステファニー・マクベイ
監督・脚本:トッド・スティーブンス
製作:レット・トファム、スティーブン・イスラエル、トッド・スティーブンス
製作総指揮:レット・トファム、ジェイ・ファレリー、ドリュー・スカラー
撮影:ジャクソン・ワーナー・ルイス
美術:カサンドラ・デアンジェリス 衣装:ショーナ=ノバ・フォーリー キティ・ブーツ
編集:スペンサー・シリー、サンティアゴ・フィゲイラ・W
音楽:クリス・スティーブンス
音楽監修:ジェリー・ガーシュマン